従来、設備投資といえば「生産性向上」「コスト削減」「人手不足対策」など、あくまで“工場内の課題解決”が目的でした。
しかし近年、もう一つの目的として注目されているのが——
「展示会で“見せる”ための設備投資」です。
今や製造業も、製品だけでなく“製造プロセスそのもの”がマーケティング要素となり、展示会や見学会で「どんな仕組みで作っているのか?」をアピールすることが販路拡大や採用に直結しています。
この記事では、「展示会前提で考える設備投資」の考え方と、その戦略的メリットについて初心者向けにわかりやすく解説します。
なぜ“見せるための自動化”が重要なのか?
① 差別化になる
製品だけでは伝えきれない企業の強みや姿勢を、「製造現場の仕組み」で示すことができます。
競合との差別化にも直結します。
② 技術力・信頼性のPRになる
どのように自動化しているかを見せることで、「この会社はちゃんと作っている」「技術がある」と印象づけられます。
③ 人材採用や社内モチベーションにも効果的
自分たちが関わった設備が展示会で脚光を浴びれば、誇りやモチベーションにもつながります。
展示会で映える設備投資のポイント
① “動き”のある設備を導入する
ロボットアーム、ピックアンドプレース装置、自動搬送機など、来場者が「おっ」と目を引く動きを見せる仕組みが有効です。
② 一貫したストーリー性を持たせる
「材料投入 → 加工 → 検査 → 梱包」までをコンパクトに見せられるライン構成が望ましいです。
③ 可視化演出を組み込む
モニターにリアルタイムで動作状況や稼働データを表示させたり、工程説明を図解表示することで、見学者の理解を助けます。
④ 安全で見やすい導線・レイアウト
人の動線と機械の動きを分けた、安心・整然としたレイアウトも評価ポイントとなります。
導入事例:部品加工メーカーM社の展示戦略
M社は、ある展示会に向けて新しいロボットラインを導入しました。
当初は「展示会用の演出設備」という扱いでしたが、結果的に以下の効果を得ました。
- 展示会で注目を集め、名刺交換が従来の2.5倍
- 後日、来場企業2社から具体的なOEMの相談が発生
- 社内でも「自社の技術を誇れる環境」が生まれ、若手社員の定着率が向上
つまり、“展示会のための設備投資”が、その後の受注・採用・社内文化の形成にも波及していったのです。
展示会後も“見せる場”は続く
展示会はあくまでスタート地点。
一度導入した自動化設備は、次のような形で継続的に“見せる資産”として活用できます。
- 営業向けの現地工場案内
- 動画コンテンツへの活用(YouTubeやSNS)
- 学校・地元団体向けの見学ツアー
- 採用活動でのオンライン工場紹介
これにより、「展示して終わり」ではなく、企業ブランディングや地域連携、情報発信の核として活用できます。
「魅せる設備投資」時代に備える視点
導入前に考えておきたいポイントは以下の通りです。
✔ 撮られる前提で設計する
設備の動線、見せたい仕組み、説明用のインターフェース(HMI)などをあらかじめ“見せ場”としてデザインします。
✔ 社内と外部向けで二重の価値を持たせる
現場作業の効率化と、来場者への訴求力という“内と外”の両面に意味があるように構成しましょう。
✔ 導入事例として発信できる設計に
WebやSNSでの情報発信を前提に、数値・ストーリー・写真映えを意識して設計・運用します。
まとめ:自動化は“営業ツール”にもなる
これからの自動化は、「止まらない・疲れない」という生産性の話にとどまりません。
展示会や外部発信の“見せ場”として活用することが、企業価値の源泉にもなるのです。
- 見せられる設備を意識した投資
- 展示会で映える動きや演出
- 継続的に発信できる仕組み
これらを組み込むことで、設備は“コスト”から“ブランド資産”へと変わっていきます。
ぜひ、次の設備投資は「展示会で何を見せられるか?」から考えてみてください。