工場の自動化が進む中で、企業が目指す理想の数字の一つに「稼働率99%」があります。
しかし、実際にこの数字を達成している現場はごくわずかです。
機械トラブル、段取り替えのロス、人的対応の遅れ――こうした小さな要因が積み重なり、稼働率を下げてしまうのです。
この記事では、初心者でも理解できるように、工場自動化設備を高稼働率に導く仕組みと考え方を解説します。
稼働率とは何か ― 数字の意味を正しく理解する
まず、稼働率（OEE: Overall Equipment Effectiveness）は「設備が実際に生産に使われていた時間の割合」を示す指標です。
一般的には、以下のように分解して考えます。
- 可動時間：設備が動いていた時間
- 停止時間：トラブルやメンテナンスによる停止時間
- 非稼働時間：段取り替え、休憩、資材待ちなどの時間
つまり、設備を「どれだけ止めずに」「無駄なく」「安定して」動かせるかが稼働率を決めるのです。
99%というのは、1日のうちほぼ止まることなく動いている状態。
言い換えれば、「止めない仕組み」をどれだけ整えられるかが鍵になります。
稼働率を下げる3つの要因
稼働率を99%に近づけるためには、まず「何が稼働率を下げているのか」を正確に把握することが大切です。
多くの工場では、以下の3つが主な原因となっています。
設備トラブルによる停止
モーターやセンサー、PLCなどの不具合による突発停止は、稼働率を大きく下げます。
原因の多くは、定期点検不足や消耗品の交換遅れなどの「予防保全不足」です。
段取り替え・調整時間
製品切り替え時の段取りや、微調整作業もロスの一因です。
段取り時間を短縮する仕組みを作ることで、稼働率は大きく改善します。
人的対応の遅れ
アラーム発生時に対応が遅れると、わずか数分でも停止時間が積み重なります。
現場がリアルタイムで状況を把握できる仕組みを整えることが求められます。
「止めない工場」をつくる5つの仕組み
稼働率を高めるためには、単に新しい設備を導入するだけでなく、現場全体を“止めない仕組み”に変えていくことが重要です。
以下の5つが、稼働率を99%に近づけるための実践的なアプローチです。
IoTによる稼働監視
センサーやネットワークを活用して、設備の稼働状況をリアルタイムに見える化します。
「どの設備が、いつ、どんな理由で止まったのか」を数値化することで、ボトルネックが明確になります。
最近では、安価なIoTデバイスを既存設備に後付けする方法も普及しており、導入ハードルは大きく下がっています。
予知保全の導入
AIやデータ解析を使って、「壊れる前に手を打つ」仕組みを構築します。
モーターの振動や温度データを常に監視し、異常の兆候を早期に検出することで、突発停止を防ぐことができます。
定期点検よりも効率的で、停止時間を最小化できるのが大きな強みです。
段取り替えの自動化・標準化
生産切り替えに時間がかかる場合は、段取り作業を自動化または標準化します。
例えば、型替えを自動で行う仕組みや、作業手順をデジタル表示して誰でも同じ手順で行えるようにすることで、ムダな時間を減らせます。
「人に依存しない段取り」が、稼働率向上の大きな一歩です。
アラートと対応の即時化
設備異常が発生した際に、担当者へすぐに通知する仕組みを整えることも重要です。
アラーム情報をスマートフォンやPCに自動通知するだけで、対応スピードが格段に上がります。
また、異常の履歴をデータ化しておけば、再発防止や改善にも活かせます。
教育と現場意識の共有
最終的に、稼働率を支えるのは「人」です。
現場のオペレーターが設備の状態を理解し、異常の兆候に気づけるようになることが、高稼働率の維持に欠かせません。
「なぜ止まったのか」「どうすれば止まらないか」を現場全体で共有する文化をつくることが、安定稼働の基盤になります。
データに基づく改善サイクルを回す
一度の改善で稼働率が劇的に上がることはありません。
重要なのは、データをもとに小さな改善を繰り返す仕組みをつくることです。
例えば、次のようなサイクルが効果的です。
- 設備データの収集
- 停止原因の分析
- 対策の実施
- 効果の検証
この「見える化 → 改善 → 検証」のループを定着させることで、稼働率は着実に上昇していきます。
データに基づく判断は、感覚的な改善よりも再現性が高く、長期的に安定した生産体制を築けます。
トップダウンとボトムアップの融合が成功の鍵
稼働率向上の取り組みでは、経営層の決断と現場の理解がどちらも必要です。
経営側が投資判断を行い、現場が運用・改善を担う――この役割分担がうまく機能していないと、どんな仕組みも形骸化してしまいます。
特に現場スタッフが「自分たちの仕事が楽になった」「トラブルが減った」と実感できると、改善意識が継続します。
トップダウンだけでなく、ボトムアップの視点を取り入れることが、稼働率を長期的に維持する秘訣です。
まとめ
工場の自動化設備を「稼働率99%」に近づけるためには、技術と人の両面からのアプローチが欠かせません。IoTによる可視化、AIによる予知保全、標準化された段取り、迅速な対応体制、そして現場の学びの循環。
これらを一つずつ積み上げることで、止まらない工場が実現します。
“高稼働率”とは単に機械が動き続けることではなく「人・設備・データが一体となって動く状態」を意味します。
その仕組みを整えたとき、工場は真の意味での自動化を達成できるのです。
機械のことで困っている方から状況をヒアリングし、近くの修理業者さんに駆けつけてもらえれば、修理業者同士も助かるし、何より困っている方を早く助けることができる。
そんな思いで機械修理ドットコムを立ち上げました。
