製造現場の自動化が進む一方で、課題となっているのが“自動化を設計・改善できる若手社員の育成”です。
PLCやロボットを扱える人材は年々貴重になっており、「設計スキルはOJTだけでは育たない」という声も増えています。
そこで注目されているのが、“社内ハッカソン”という取り組みです。
若手が自ら考え、自ら手を動かす実践型の社内イベントで、短期間で自動化設計スキルが大きく育つ場として活用されています。
ハッカソンとは?製造業における活用のかたち
「ハッカソン(Hackathon)」とは、Hack(改良)とMarathon(長時間開発)を掛け合わせた言葉で、決められたテーマのもと、短期間でアイデアを形にするイベントです。
製造業では以下のような形式で活用されます。
- テーマ:自社の現場課題を“自動化で改善”すること
- 時間:1日〜3日間で集中して取り組む
- メンバー:若手エンジニア+OJT担当+設備管理者などの混成チーム
- 成果物:実際に動くデモ装置やシステム、改善提案書
目的は「完璧なシステムを作ること」ではなく、「問題発見と解決力を育てること」です。
事例①:PLC制御+センサーで部品選別機を自作
ある製造企業では、2年目の若手社員4人がチームを組み、「サイズ違いの部品を自動で分別する仕組み」をテーマに1日ハッカソンを実施。
使用したのは、
- 小型コンベア
- 光電センサー+Arduino
- シンプルなPLC+表示器
わずか6時間で、手動より正確かつ高速に選別できるデモ機を完成。
評価ポイントは「アイデア力」「制御ロジックの簡潔さ」「トラブル対応力」でした。
若手社員からは「これまで“動かされた機械”しか知らなかったが、設計する側の面白さがわかった」との声も。
事例②:既存設備の異常検知タイミングを改善
別の企業では、「熟練者の勘に頼っていた異音検知」をテーマにハッカソンを実施。
- スマホマイクで騒音データを録音
- Pythonで波形を比較・学習
- “いつもと違う音”が出たらランプで通知
という仕組みを2日で構築。
熟練者が「これなら新人でも異常に気づける」と高評価を得ました。
このプロジェクトは後に本格実装され、トラブル対応時間が30%短縮されたそうです。
ハッカソンの教育効果はどこにあるのか?
- 現場課題を“自分ごと”として捉えられる
- 設計・制御・試行錯誤をすべて体験できる
- 短期間でPDCAを複数回回せる
- 社内横断で“教え合う文化”が育つ
さらに、評価や表彰を行うことで、若手の「自動化に関わりたい」という意欲を引き出すことができます。
成功させるためのポイント
- テーマは“身近で改善余地があるもの”にする
- 使える機材や時間を明確にして制約を設ける
- 途中に中間発表やレビュー時間を挟む
- 「結果」ではなく「過程と学び」を評価する
また、審査員として管理職や現場ベテランが参加すると、社内での“成果の橋渡し”にもつながります。
まとめ:“遊び”の中に育つ本物のスキル
社内ハッカソンは、「楽しみながら学ぶ」「制限の中で工夫する」という、実務では得がたい経験が詰まった育成の場です。
若手にとっては「自分で設計したものが動く」達成感、
企業にとっては「未来の自動化設計者を育てる」投資。
マニュアルや座学だけでは育たないスキルを、“手を動かす現場型ハッカソン”で磨いていきましょう。

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