人手不足が深刻化する中、「工場の無人化」を目指す企業が増えています。
しかし、「すべての工程を一気に自動化・無人化する」のは、コスト的にも技術的にも現実的ではありません。
そこで重要になるのが、「どの工程から無人化を進めれば効果的か?」という戦略的な優先順位の設定です。
この記事では、工場全体の無人化率を高めるために、まずどの工程から自動化・無人化を進めるべきかをわかりやすく解説します。
無人化率とは?
無人化率とは、工場全体の中で「人の介在なく稼働している工程の割合」を示す指標です。
単に「何人削減できたか」ではなく、「どこまで人の手を離れて自律稼働できているか」に注目するのがポイントです。
この無人化率を段階的に高めるためには、「無人化しやすい工程」から着手し、成果を積み重ねていく必要があります。
優先導入すべき5つの工程
搬送・仕分け工程
【理由】
単純で繰り返しが多く、作業の標準化がしやすい。
また、AGV(無人搬送車)やコンベアシステムの導入事例も豊富。
【導入効果】
- 作業者の移動距離を削減
- 荷物落下や接触などの事故リスクを低減
- 夜間稼働も容易に
検査工程(特に外観検査)
【理由】
AI画像認識やディープラーニングを活用した検査自動化が進展中。
人による目視検査は疲労や個人差の影響を受けやすいため、代替効果が大きい。
【導入効果】
- 検査品質の安定化
- 記録データの自動蓄積
- 作業者の精神的負担を軽減
梱包・箱詰め工程
【理由】
決まったサイズ・形状の製品であれば、ロボットアーム+カメラで対応可能。
特にパレタイジング(製品積み付け)は導入が進んでいる。
【導入効果】
- 繰り返し作業の自動化による疲労軽減
- 出荷準備のスピードアップ
- 女性・高齢者でも管理業務にシフト可能
単純な組立工程
【理由】
部品の形状や工程が単純であれば、協働ロボットや自動ネジ締め機などで置き換え可能。
標準化された製品ラインでは特に導入しやすい。
【導入効果】
- 安定した品質の維持
- 作業教育の簡素化
- 人手不足の影響を受けにくくなる
記録・帳票入力などの事務処理
【理由】
IoT機器やセンサーからの自動データ収集、RPAによる帳票作成など、非製造領域の無人化も可能。
【導入効果】
- ミスのない記録・送信処理
- リアルタイムな可視化
- 生産管理者の業務負担を削減
工程選定時のチェックポイント
導入を進める際は、以下の観点から優先順位を判断しましょう。
- 反復性が高いか?(標準化しやすい)
- 人的負担が大きいか?(安全・疲労・退職リスク)
- トレーサビリティが求められるか?(記録が必要)
- 夜間・休日の稼働ニーズがあるか?
このように、“自動化しやすさ × 導入効果の大きさ”で工程を絞ると、無人化率を効率的に高めていくことが可能です。
実例:段階導入で無人化率60%を達成
ある電子部品メーカーでは、以下の順序で無人化を進めました。
- AGVによる構内搬送の自動化
- AI画像認識による外観検査導入
- 梱包工程のロボット化
- 組立の一部を協働ロボットへ移行
- 記録・分析をIoTとRPAで統合
結果として、従来の“20人で24時間稼働”から“8人で同等の生産能力”に改善。
現場の負担も大幅に軽減され、再雇用・女性スタッフの活用も進みました。
まとめ:小さく始めて、確実に無人化率を上げる
工場の無人化は、「一気にすべて無人にする」ものではありません。
まずは“効果が見えやすく、技術的ハードルが低い工程”から着手し、段階的に展開していくことが成功のカギです。
- 搬送、検査、梱包などの繰り返し作業から着手
- 現場の声を聞きながら、改善と展開を繰り返す
- 人が“価値ある作業”に集中できる環境づくりへ
これが、持続可能な“無人化×人間力”の工場づくりの第一歩となるのです。