工場の自動化設備を導入したあと、多くの企業が見落としがちなのが「維持費」と「保守費」の管理です。導入時は初期費用に目が向きがちですが、長期的に見れば維持・保守コストが経営を圧迫することも少なくありません。
これらのコストをしっかり「見える化」しておくことが、設備投資の成功には欠かせません。
今回は、初心者向けに、維持費・保守費を見える化する方法をわかりやすく解説します。
なぜ見える化が重要なのか?
維持費や保守費は、単なる経費として処理されがちですが、実際は「どの設備がどの程度コストを生んでいるか」を明確にすることで、無駄を発見し、最適化のヒントが得られます。
見える化を行うことで以下の管理精度が向上します。
- 高コスト設備の特定
- メンテナンス頻度の最適化
- 設備更新のタイミング把握
ステップ1:コスト項目を洗い出す
まず、維持費・保守費の内訳を細かく整理します。
例としては以下の通りです。
- 維持費
- 電気代・水道代
- 消耗品費
- 清掃・管理費
- ソフトウェア更新料
- 保守費
- 定期点検費用
- 修理・交換費用
- メンテナンス契約料
- 突発的なトラブル対応費
ここで重要なのは、曖昧な「一括計上」を避け、設備ごと・内容ごとに分類することです。
ステップ2:データ収集の仕組みを作る
維持費・保守費を見える化するためには、日常的なデータ収集が必要です。以下のような方法が効果的です。
- 月ごとの費用を記録:会計データから各設備ごとの支出を抽出します。
- 作業日報との連携:メンテナンスやトラブルの履歴を作業日報に反映し、後で参照できるようにします。
- IoT機器の活用:消費電力や稼働時間をリアルタイムで可視化することで、見えないコストも見える化。
ステップ3:見える化ツールの導入
Excelなどの表計算ソフトでも一定の管理は可能ですが、複数の設備を管理する場合は専用の「見える化ツール」を活用すると効率的です。
例:
- 設備保全管理ソフト(CMMS)
- IoTダッシュボード
- クラウド型の設備管理システム
これらを使うことで、グラフ表示やアラート機能が利用でき、現場と経営層の両方が情報を共有しやすくなります。
ステップ4:定期的なレビューを実施
データを集めて終わりではなく、四半期ごとや半年ごとにレビューを実施し、以下を確認します。
- 設備ごとのコスト推移
- メンテナンス頻度とコストのバランス
- 高コスト要因の有無
これにより、設備更新の必要性や、運用改善ポイントが明確になります。
ステップ5:KPI設定と社内共有
見える化の成果を最大化するためには、KPI(重要業績評価指標)を設定して継続的にモニタリングすることが大切です。
例:
- 設備ごとの年間維持費目標
- トラブル発生件数の削減目標
- 修理費用の前年比改善率
そして、現場スタッフにも定期的に共有し、意識を高めることで、コスト意識の底上げが期待できます。
事例紹介
ある中小企業では、IoT対応の保全管理ソフトを導入し、電力使用量や点検履歴を自動記録。2年間のデータを分析したところ、特定のラインだけが他に比べて高コストであることが判明。
対策として老朽化した設備を更新し、結果として年間150万円のコスト削減に成功しました。
まとめ
設備導入後の維持費・保守費を「見える化」することは、経営の安定と将来的な成長の両方に欠かせません。
データを細分化して収集し、分析ツールを活用しながら定期的にレビューを行うことで、無駄を抑えた強い現場が実現します。
今日から一歩、見える化を始めてみませんか?