製造現場でよく聞くキーワードに「現場改善(カイゼン)」と「自動化」があります。しかし、「自動化すればもう改善の余地はない」「改善を繰り返す現場には自動化は合わない」といった誤解も少なくありません。
実際には、現場改善と自動化は対立するものではなく、むしろ「相乗効果を生む関係」にあります。重要なのは、自動化を改善活動の一部に組み込み、PDCAサイクルの中でスパイラルアップ(継続的進化)させていくことです。
本記事では、PDCAサイクルと自動化の関係性、そしてそれをうまく現場に組み込むための考え方と実践方法を、初心者向けにわかりやすく解説します。
PDCAとは?現場改善の基本フレーム
PDCAとは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)を繰り返すことで、業務や品質を継続的に向上させる改善手法です。
特に製造業では、トヨタ生産方式や5Sなどとともに、PDCAは現場改善の中核として活用されています。
- Plan(計画): 課題の洗い出しと対策立案
- Do(実行): 実際に対策を現場で試す
- Check(評価): 効果を数値や観察で確認
- Act(改善): 次の改善につなげて標準化
自動化がPDCAに与える“ブレイクスルー効果”
自動化をPDCAサイクルに組み込むと、以下のようなメリットが生まれます。
① データが自動で「Check」される
センサーやIoTを活用すれば、作業時間、ミス率、稼働状況などが自動記録され、感覚的で曖昧な「評価」が定量的に行えるようになります。
② 改善が「標準化」しやすい
改善された工程を自動化に落とし込めば、作業者ごとのばらつきがなくなり、「誰がやっても同じ品質」が実現します。
③ 「Act」が次の自動化アイデアにつながる
改善によって得られた知見を次の自動化設計に反映することで、技術的にも成長する“改善スパイラル”が生まれます。
自動化をPDCAに組み込む実践の流れ
- Step1:自動化ではなく“現場の課題”に注目
「なぜこの工程でミスが出るのか?」「なぜ手待ちが発生するのか?」など、まずは改善の視点から課題を洗い出します。 - Step2:改善案の一つとして自動化を検討
自動化は万能ではありません。「段取り作業を省く」「記録作業を自動化する」など、部分的でも効果が出るポイントを探します。 - Step3:効果測定のためのセンサーやログ設計
自動化と同時に、改善効果が見えるようにデータ取得設計も実施。Check段階で使う数値が明確になります。 - Step4:改善内容を標準化+自動化に組み込む
効果が確認できたら、その内容を作業標準に落とし込み、できる範囲から自動化していきます。
事例:検品工程のカメラ検査導入とPDCA
ある食品メーカーでは、手作業で行っていたパッケージのラベル検品工程に、画像認識AIとカメラを導入。
- Plan:ミスが多発していた原因を「作業者の集中力」と特定
- Do:AIカメラによる検査をテスト運用
- Check:ミス率が80%減、作業時間も20%短縮
- Act:AI検査を正式導入、ログを活用して包装ライン全体の見直しへ発展
結果として、PDCAの“C”と“A”の精度が向上し、次の改善テーマも自然と見えてくるようになりました。
注意点:自動化に頼りすぎない“人の視点”も大切
自動化をPDCAに組み込む際の注意点は、「すべてを機械任せにしない」ことです。数値化できないヒューマンファクター(疲れ、集中、慣れ)や、現場の違和感には、作業者の声や観察が不可欠です。
自動化で得られたデータに加えて、「現場の実感」も合わせてチェックすることで、より強い改善が生まれます。
まとめ:改善と自動化は“交互に進化”する
PDCAは、現場改善のためのフレームであり、自動化はその改善結果を定着・強化するためのツールです。
この2つを組み合わせることで、改善のたびに自動化が進み、自動化によってさらに改善が見えるようになる“スパイラル構造”が実現します。
自動化はゴールではありません。むしろ「改善を止めないための手段」として、自社のPDCAに組み込むことが、強い現場づくりの第一歩となります。

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