経営層は“数字”よりも“見える化”で動く

事例紹介

工場の自動化を進める上で避けて通れないのが「経営層の理解・承認」です。

しかし、現場からの報告が「専門的すぎる」「定性的すぎる」と、投資判断が得られないケースも多くあります。そこで重要なのが「可視化資料」の作成です。

本記事では、経営層に伝わる“見せ方”のポイントを初心者にもわかりやすく解説します。

なぜ「可視化」が必要なのか?

現場の声や改善提案は、現場でこそ意味が通じますが、経営層には“伝わりにくい”ことが多くあります。

  • 「月50時間の作業削減」はどれだけのインパクト?
  • 「検査精度の向上」とは何がどれくらい変わる?
  • 「人件費削減」はどこまで現実的か?

こうした疑問に対して、言葉や数字だけでなく「図解」「チャート」「ビジュアル」で伝えることで、理解と納得を得ることができます。

可視化資料に求められる3つの視点

  1. “現状”と“改善後”のギャップが一目で分かること
  2. 金額・時間・効果が数字で示されていること
  3. 社内用語ではなく、経営目線の言葉が使われていること

たとえば「歩留まり改善」ではなく「不良削減によるコスト低減」、「手作業削減」ではなく「人件費構造の見直し」という表現に置き換えると、経営層には響きやすくなります。

図解の基本:工程フロー+色分け

自動化提案において有効な図解の一つが、「現場の工程フロー図」です。

  • 手作業部分を赤、機械作業を青で色分け
  • 作業時間・人数を記載
  • 自動化後の比較フローも同時に提示

これにより「どこを自動化するのか」「どれだけ短縮されるのか」が一目で伝わります。パワーポイントやLucidchart、Miroなどのツールを活用すると効果的です。

金額インパクトの算出法

経営層に響くのは、最終的な「金額効果」です。
以下のような視点で簡単な試算をつけましょう。

  • 年間作業時間 × 時給換算 = 人件費圧縮額
  • 不良率の改善 × 材料単価 = 材料ロス低減額
  • 設備投資額 ÷ 投資回収期間 = 回収年数(ROI)

例えば、「300万円の自動化投資で、年間120万円の人件費削減」ができるなら、「2.5年で投資回収」という明確なメッセージになります。

ビフォーアフター型のスライド構成

以下のような構成でプレゼン資料を作成すると、経営層にも分かりやすくなります。

  1. 現状の課題(写真・図・数字で説明)
  2. 対応策(導入機器やシステムの概要)
  3. 効果予測(時間・コスト・品質への影響)
  4. 投資額と回収見込み(ROI)
  5. 次のステップ(試験導入やスケジュール)

文字はなるべく少なくし、視覚的な資料をベースにするのがポイントです。

実例:食品工場での搬送工程の自動化提案

ある食品メーカーでは、「箱詰め後の搬送」を人手で行っていたため、1日平均90分の作業時間が発生していました。ここにAGV(自動搬送車)の導入を提案する際、以下の資料構成で経営層の承認を得ました。

  • 手作業の様子を写真で提示
  • 作業量と人件費を定量化(年間180万円)
  • AGV導入で自動化された図を提示
  • 設備費用320万円、ROIは1.8年と試算

これにより、現場と経営層の“見ている視点”をつなぐことができました。

まとめ:「伝える努力」が現場を変える

どれだけ良い提案でも、伝わらなければ意味がありません。
経営層は現場に詳しくないからこそ、“数字と可視化”で伝える工夫が求められます。

可視化資料は、自動化の「技術提案」であり、「経営提案」でもあります。
相手の立場に立った資料づくりが、現場に変化を起こす第一歩です。

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