アフターコロナ時代に求められる柔軟性ある自動ライン設計

事例紹介

コロナ禍を経て、製造現場では「供給の安定性」と「変化への対応力」の重要性が高まりました。

在宅勤務、サプライチェーンの混乱、急な需要変動など、これまでの常識が大きく覆されたことで、自動化ラインにも“柔軟性”が強く求められるようになっています。

単に人を機械に置き換えるだけでなく、「環境変化に強いライン設計」がこれからのスタンダードです。

柔軟性ある自動ラインとは?

柔軟性のある自動ラインとは、以下のような特性を備えた生産システムを指します。

  • 多品種少量生産に対応できる(切替が速い)
  • 工程の追加・削除・組み換えが容易
  • 外部システムや人との連携がスムーズ
  • 非常時に手作業へ一部切り替え可能

つまり、1つの製品に最適化された“固定ライン”ではなく、変化を見越して“再構築可能なライン”を設計する必要があります。

アフターコロナで注目された現場の変化

  • 需要の変動が激しくなった:例)衛生用品やテレワーク機器の急増
  • 人員配置の制限:密を避けるため作業者数に上限
  • BCP(事業継続計画)の再評価:緊急時に生産を止めない体制構築

これらの背景から、「いつでもレイアウト変更ができる」「多能工ロボットで工程を共通化する」などの工夫が求められています。

設計の考え方①:モジュール型ライン構成

工程を「モジュール(部品化)」しておくことで、工程単位での組み替えが容易になります。

  • 組立・検査・搬送を個別ユニットにする
  • 必要な工程だけをつなげて運用
  • 新製品投入時もモジュール追加で対応

このような構成により、設備の再利用率が上がり、設備投資の無駄も削減できます。

設計の考え方②:協働ロボットの活用

協働ロボット(コボット)は、人と同じ作業空間で安全に作業が可能なため、柔軟なライン構築に最適です。

  • 人手不足時はロボット稼働を強化
  • 製品ごとの作業指示を簡単に切り替え
  • ロボットを他工程に“移動して使う”発想も可能

特に、中小規模の工場では「固定設備」よりも「移動可能な協働ロボット」のほうが効果を発揮します。

設計の考え方③:ITとIoTの融合

柔軟性あるラインを実現するには、設備と情報の連携も不可欠です。

  • 各装置の稼働状況や品質をリアルタイムで可視化(IoT)
  • 設備ごとに稼働プログラムを簡単変更(MES連携)
  • 遠隔からの設定変更や監視による省人化支援

これにより、少人数でも多工程のラインを効率的に制御できる体制が整います。

実例:電子部品メーカーのライン再構築

ある電子部品メーカーでは、コロナ禍によって中国の部品供給が一時ストップ。
これを機に国内2拠点を再編し、柔軟性のあるラインに再設計しました。

  • 工程ユニットをAGV(自動搬送車)でつなぐ
  • 組立・検査・梱包をモジュール単位で分離
  • MESと連携し、日々の生産指示を自動送信

結果として、年間50機種以上の製品に対応できる“切替型ライン”を実現。需要の波に合わせて小ロット・短納期対応が可能となり、営業範囲も拡大しました。

まとめ:これからのラインは“変わる前提”で設計する

アフターコロナの製造業では、「一度つくって終わり」の固定ラインでは不十分です。

むしろ、「変わることが前提」として設計し、状況に応じて構成を変更できる柔軟性こそが、競争力となります。

不確実な時代にこそ、自動化は“固める道具”ではなく、“変われる仕組み”として活用していくべきなのです。

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