工場や製造現場では、自動化機器の導入が進み、生産効率の向上やコスト削減が期待されています。しかし、機械が自動で動くことで、作業員が機器に巻き込まれたり、衝突したりする危険性も高まります。
そのため、自動化機器を導入する際には、機械自体の安全基準を守ることはもちろん、現場で働く作業員の安全を確保することが非常に重要です。本記事では、初心者の方にも分かりやすく、自動化機器の安全基準や、作業員の安全を守るポイントについて解説します。
自動化機器の安全基準とは？
自動化機器の安全基準とは、機械や設備を使用する際に、作業員の安全を確保するために守るべきルールや規則のことです。これらの基準は、国際規格や法律、業界ガイドラインなどによって定められています。
主な安全基準と規格
- ISO 12100（機械の安全 – 設計の一般原則）
- 機械の設計段階からリスクを低減するための指針を提供します。
- 危険源の特定、リスク評価、リスク低減の手順を示しています。
- IEC 61508（機能安全 – 安全関連システムの設計）
- 自動化機器に組み込まれた制御システム（センサー、PLC、ロボット制御装置など）の安全性を確保するための基準です。
- ISO 13849（機械安全 – 制御システムの安全関連部品）
- 自動化機器の制御システムが、どの程度の安全性を持っているかを評価するための規格です。
- 日本の労働安全衛生法
- 日本国内では、労働安全衛生法に基づき、機械設備の設置や使用における安全基準が定められています。
- 作業員の教育や、安全装置の設置が義務付けられています。
自動化機器の安全対策の具体例
1. 非常停止ボタンの設置
万が一、機器が異常動作をした場合に、作業員がすぐに機械を停止できるように非常停止ボタン（緊急停止装置）を設置します。
- 設置場所: 作業エリアの見やすく、すぐに手が届く場所
- 色と形: 赤色の大きなボタンが一般的で、直感的に認識しやすい
2. 安全柵や安全カバーの設置
自動化機器の可動部分や危険な箇所に、安全柵やカバーを取り付けることで、作業員が誤って機械に接触することを防ぎます。
- 安全柵: ロボットアームの動作範囲や危険区域を囲むように設置します。
- 安全カバー: ベルトコンベアの巻き込み部分や、切削機械の刃などに取り付け、直接触れないようにします。
3. センサーやライトカーテンの活用
自動化機器の周囲にセンサーやライトカーテンを設置し、人が近づいた際に機械が自動的に停止する仕組みを導入します。
- 光学センサー: 作業エリアに人が入ると光を遮断し、機械が安全モードに移行します。
- 接触センサー: 機械が作業員に触れた場合、動作を停止する機能を備えます。
4. 安全標識や表示の設置
作業現場に注意を促す標識や表示を設置することで、作業員に危険箇所や注意点を周知します。
- 表示例: 「立ち入り禁止」「危険エリア」「非常停止ボタンはこちら」
- 視認性: 大きく見やすい文字や、ピクトグラム（絵文字）を活用します。
5. インターロック機能の導入
機器のカバーや扉を開けた際に、機械が自動的に停止する「インターロック機能」を導入します。
- 利用シーン: メンテナンス時に安全柵を開けると、機械が動かなくなる
- メリット: メンテナンス中の事故防止や、不正操作の防止につながります。
作業員の安全を守るためのポイント
1. 作業員への安全教育の実施
- 安全装置の使い方: 非常停止ボタンやインターロックの仕組みを理解する
- 機器の操作方法: 正しい操作手順や、トラブル時の対応方法を学ぶ
- 安全基準の周知: 労働安全衛生法やISO規格に基づいた安全ルールを共有する
2. 作業手順書やマニュアルの整備
- チェックリストを用意: 日常点検時に確認すべき項目をリスト化する
- トラブル対応マニュアル: 異常が発生した場合の手順を明示し、誰でも対応できるようにする
3. 定期的なメンテナンスと点検
- 機器の状態確認: センサーや安全装置が正常に動作しているかを確認する
- 消耗品の交換: 摩耗した部品を早めに交換し、事故のリスクを減らす
- 記録の管理: 点検結果を記録し、改善が必要な箇所を把握する
自動化機器の安全対策成功事例
事例: 自動車部品製造工場での安全対策
背景: ロボットアームが作業エリアで稼働しており、作業員の安全確保が課題となっていた。
対策:
- 安全柵とライトカーテンを設置し、作業員が近づくとロボットが自動停止する仕組みを導入。
- 作業員には安全教育を実施し、非常停止ボタンの使用方法を訓練。
結果:
- 事故件数がゼロになり、作業員の安心感も向上。
- 生産効率も維持でき、安全と生産性の両立を実現。
まとめ
自動化機器の導入は、生産性の向上や人手不足の解消に大きな効果をもたらしますが、同時に作業員の安全を守るための対策も欠かせません。安全基準に基づいた機器の選定や、安全装置・センサーの活用、作業員への教育を徹底することで、安心・安全な職場環境を構築できます。
企業や工場の管理者の皆様も、ぜひ今回の記事を参考に、自動化機器の安全基準を見直し、作業員が安心して働ける環境づくりに取り組んでください！
