地球温暖化対策が世界中で求められるなか、製造業における二酸化炭素(CO₂)排出量の削減は非常に重要な課題となっています。
特に企業にとっては、単に排出量を減らすだけでなく、正確に「見える化」して管理・報告できる体制を構築することが求められています。
そこで近年注目されているのが、自動化技術を活用したCO₂排出量の見える化ソリューションです。
本記事では、初心者の方にも分かりやすく、工場でどのようにCO₂を見える化できるのか、その仕組みと導入事例を紹介します。
なぜCO₂の見える化が必要なのか
CO₂排出削減の第一歩は、「どこから、どれだけ排出されているかを把握すること」です。これを実現することで、以下のような効果が得られます。
- 排出量の多い工程・設備を特定できる
- 改善の優先順位を明確にできる
- 目標設定と効果測定が可能になる
- 取引先や行政への開示資料として活用できる
特にスコープ1(自社設備による直接排出)とスコープ2(購入電力による間接排出)の管理は、企業の温室効果ガス対策として重要視されています。
CO₂を見える化するための基本構成
CO₂見える化ソリューションは、以下の要素を組み合わせて構築されます。
センサーによるデータ収集
- 電力計、燃料流量計、ガスメーター:エネルギー消費の実測値を取得
- 製品台帳や設備ログ:稼働時間や生産量と連動させることで「排出原単位」を把握
IoTでリアルタイム送信
収集されたデータを、ローカルネットワークやクラウドを通じてサーバーに集約します。
CO₂排出量の換算処理
使用エネルギーごとに定められたCO₂排出係数(例:電力1kWhあたり約0.4kg-CO₂)をかけ算して、排出量を自動計算します。
ダッシュボードによる可視化
- 工場全体/工程別/設備別での排出量のグラフ表示
- 月別・日別・リアルタイムなどの時間軸での分析
- 目標値との比較、異常検知のアラート機能
実際の導入事例
事例①:自動車部品工場でのエネルギー管理統合
ある中堅製造企業では、電力・ガス・コンプレッサー・照明・空調設備にエネルギーセンサーを導入し、IoTで一元管理。CO₂排出量を設備ごとに把握し、排出量の多い工程を自動分析。
導入効果:
- 特定工程のコンプレッサーを更新し、年間約12トンのCO₂を削減
- 各部門ごとの省エネ活動に数値根拠を提供
事例②:食品工場におけるボイラー燃焼管理
ボイラーの燃料使用量と排気温度を常時モニタリングし、燃焼効率の変化をAIで自動分析。効率が低下すると自動でアラートを発信し、整備計画を提案。
導入効果:
- 運用改善により、燃料使用量が年間5%削減
- メンテナンス頻度も最適化され、CO₂排出量とコストの両方が改善
事例③:クラウド連携による複数拠点のCO₂一括管理
複数の工場を持つ大手企業では、各工場のCO₂排出量をクラウドに統合。本社や海外拠点からリアルタイムで確認可能。
月次レポートも自動生成され、社内会議や顧客報告資料に活用されている。
導入のステップとポイント
ステップ | 内容 |
---|---|
① 対象範囲の決定 | 工場全体か、特定工程かを決める(段階的導入が現実的) |
② センサーの選定と配置 | 正確に測定するため、設備に合ったセンサーを選ぶ |
③ データ連携・クラウド基盤の整備 | PLCや既存制御盤との接続も検討 |
④ 可視化ツールの設計 | 見る人(管理職・現場・経営層)に応じた表示が大切 |
⑤ 社内での共有と活用ルール | 現場でどう活かすか、KPI化して社内に定着させる |
今後の展望
- AIとの連携により、排出傾向を予測し自動で最適化
- スコープ3(間接的排出)への対応にもつながる
- 自動車業界や建設業界では、CO₂データが調達基準の一部として要求されるケースも拡大中
こうした動きにより、単なる環境対策ではなく、「競争力のある工場運営」の一環として、CO₂見える化はますます重要になっていきます。
まとめ
製造業におけるCO₂排出削減の第一歩は、「どこで、どれだけ排出しているかを正確に知ること」です。
自動化された見える化システムを導入することで、データに基づいた具体的な改善が可能になり、継続的な削減活動につながります。
今後は、「排出量の数値を語れる工場」が、社会的信頼を得られる企業として評価される時代です。
持続可能な製造を目指し、CO₂の見える化から第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。