工場の自動化が進む中で、「自動化に強い人材を採りたい」「でも応募が来ない」「来ても見極められない」といった声が増えています。
これまでの採用基準や評価制度では、自動化スキルやその適性を十分に反映できていないことが原因です。
この記事では、これからの製造業に不可欠な“自動化人材”の採用・評価のあり方について、わかりやすく解説します。
自動化人材とはどんな人か?
まず、”自動化人材”とは、単にロボットやPLCを扱える人のことではありません。以下のような能力をバランスよく持つことが求められます。
- 論理的思考力:工程の構造や制御フローを理解できる
- 現場理解力:自動化が現場に与える影響を想像できる
- IT・制御技術の基礎知識:PLC、センサー、ネットワークなど
- 改善提案力:課題を見つけて自動化の切り口を考えられる
- チーム連携力:設計・保守・現場と連携して動ける
つまり、単なるエンジニアでもなく、現場作業者でもない「現場と技術をつなぐ人材」なのです。
採用基準の見直しポイント
「資格」より「思考プロセス」
これまで重視されがちだった“電気工事士”や“技能士”といった資格よりも、
「どう考えて課題を解決するか」というプロセスが重要です。
例:
- 問題のある工程を提示し、「どう改善するか?」を聞く
- 簡単な論理パズルやフロー図で判断力を見る
“自動化未経験”も採用のターゲットに
自動化経験者が少ない現状では、「未経験だけど適性あり」の人材を見抜く視点が必要です。
チェックポイント。
- 機械やITに興味があるか
- 新しいものに自分から触れてみるタイプか
- 指示待ちではなく、自ら考えて動けるか
多様な職種を“自動化チーム”として採る
自動化設計者だけでなく、UI設計、データ整備、設備保全など
周辺人材も含めて“チームで採用”する視点が大切です。
評価制度の見直し方
「作った機能」ではなく「改善効果」で評価
システムや装置を作ったこと自体より、「それがどう現場を変えたか」に注目します。
評価例:
- 作業時間が20%短縮された
- エラーが自動で記録され、報告書作成が不要になった
- 新人でも同じ作業ができるようになった
プロセスと連携力も評価対象に
自動化は個人プレーでは成立しません。以下も評価項目に含めましょう。
- 現場ヒアリングの回数や質
- 保全・設計部門との連携力
- 導入後の現場教育やサポート体制づくり
「育成された人」の活躍も評価
自分で装置を作っただけでなく、他者に教えたりナレッジを残した人も評価対象にします。
- 操作マニュアルや動画を作成
- 後輩や現場スタッフを育成
- 社内勉強会を企画・講師として登壇
実例:中小企業の人事制度改革
ある中堅部品メーカーでは、「自動化の旗振り役が退職したらすべて止まってしまった」という反省から、採用・評価制度を一新。
- 未経験からの“自動化人材育成コース”を新設
- 評価制度に「自動化による改善貢献」「現場支援スキル」を追加
- 成果は“数字と感謝”で評価(例:月間異常件数の減少+現場の声)
これにより、若手も自動化に関われる文化が生まれ、現場の改善スピードが倍増しました。
まとめ:「人」を基軸とした自動化推進を
自動化の本質は、「人の作業を置き換える」ことではなく、「人の知恵を活かして、より良い現場をつくる」ことです。
そのためには、次の3点が重要です。
- 採用では“経験”より“思考力と適性”を見抜く
- 評価では“技術”より“効果と貢献”を認める
- チームでの自動化文化を育てる
こうした仕組みが整えば、自動化は「できる人がやるもの」から「みんなで育てるもの」へと変わっていきます。