工場自動化の現場で、シリンダーの駆動方式として代表的なものに「空気圧シリンダー」と「電動シリンダー」があります。
どちらも物体の押し出しや位置決め、搬送などに使用されますが、選定を誤るとコストや生産性に影響するため、目的に応じた使い分けが重要です。
空気圧シリンダーの特徴とメリット
空気圧シリンダーは、圧縮空気の力を使って駆動します。構造がシンプルで価格も安く、長年にわたり多くの工場で使用されてきました。
- 初期コストが安い
- 高速動作が可能
- 爆発や引火の心配がない(防爆性)
- 構造が簡単でメンテナンスも容易
ただし、圧縮空気の供給設備が必要で、エネルギー効率が低い点や、位置決め精度がそれほど高くない点がデメリットです。
電動シリンダーの特徴とメリット
電動シリンダーはモーターで制御され、サーボモーターやステッピングモーターを組み込んだ構造が一般的です。最近ではスマートファクトリーとの親和性の高さから導入が進んでいます。
- 位置制御が非常に高精度
- 速度や加速度の制御が自在
- 省エネルギーでランニングコストが低い
- データ連携やモニタリングが可能
反面、初期コストが高く、複雑な構成・制御が必要な点が導入障壁となることもあります。
選定のポイントは「目的」と「条件」
では、実際にどちらを選ぶべきでしょうか。以下の観点で比較すると選定しやすくなります。
選定項目 | 空気圧シリンダー | 電動シリンダー |
---|---|---|
コスト重視 | ◎ 初期費用が安価 | △ 高めの導入コスト |
位置決め精度 | △ 大まかな位置決め | ◎ 高精度制御が可能 |
スピード重視 | ◎ 高速往復運動 | ○ 動作速度は調整可能 |
エネルギー効率 | △ 圧縮空気は非効率 | ◎ 消費電力の管理が可能 |
保守・管理 | ◎ シンプルで扱いやすい | △ 専門的知識が必要 |
導入事例から見る選定基準
例えば、包装ラインで同じ動作を高速で繰り返す工程では空気圧シリンダーが適しています。一方、検査装置で微細な位置決めが必要な工程では、電動シリンダーの導入で品質と生産性が向上したケースがあります。
現場ごとの「繰り返し精度」「省エネ要件」「制御方式の柔軟性」といった要素を軸に判断するのがポイントです。
まとめ:コスト vs 精度、どちらを優先するか
空気圧と電動、どちらのシリンダーも一長一短があります。大切なのは、現場のニーズを明確にし、「何を重視するか」を判断材料にすることです。
コストを抑えつつ汎用的な用途であれば空気圧、精度や柔軟性が求められる用途では電動が有利です。
未来の工場づくりでは、このような「目的に応じた選定」が、安定稼働と効率化への第一歩になるのです。

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