設備の停止は、製造業にとって最も避けたいトラブルの一つです。突発的な停止が発生すると、生産ラインが止まり、納期遅延や品質不良にもつながります。そこで注目されているのが「予防保全」の取り組みです。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく、予防保全の基本的な考え方と、実際に可動率95%以上を達成した成功工場の事例を紹介します。
予防保全とは?
予防保全とは、設備の故障やトラブルが発生する前に、あらかじめ点検や部品交換を行うことで、生産停止を未然に防ぐ保全活動です。
種類としては次の2つがあります:
- 時間基準保全(TBM)
稼働時間やカレンダーに基づいて定期的にメンテナンスを行う方式。 - 状態基準保全(CBM)
センサーなどで設備の状態を監視し、異常の兆候を捉えてメンテナンスを実施。
なぜ予防保全が重要なのか?
- 突発停止による生産ロスの回避
1時間のライン停止が数十万円〜数百万円の損失につながるケースもあります。 - 品質トラブルの未然防止
不安定な設備での生産は、歩留まり悪化や不良品発生の原因になります。 - 保全コストの最適化
壊れてから直す「事後保全」は緊急対応となり、結果的に高コストになりがちです。
成功工場の予防保全導入事例
✅ 電子部品メーカー(従業員60名/関東地方)
課題:月に数回の突発停止。可動率は平均88%
対策:
- 主要設備に振動・温度センサーを設置
- 週次の保全ミーティングで傾向変化をチェック
- 故障履歴をもとに「予兆傾向パターンリスト」を作成
- PLCと連携してアラート通知を自動化
結果:
- 年間で突発停止件数を70%削減
- 月次可動率:88% → 96%へ向上
- 保全対応の工数削減、現場の負担も軽減
初心者向け 予防保全導入ステップ
ステップ① 設備の優先順位をつける
すべての設備を一度に対象にするのは非現実的。まずは「止まったら困る設備」「よく壊れる設備」に絞って始めましょう。
ステップ② データを集める
- 故障履歴
- 交換部品リスト
- 稼働時間ログ
- オペレーターの感覚的なメモ(異音・発熱など)
この情報が予兆判断のベースになります。
ステップ③ 点検タイミングを見える化
エクセルやGoogleスプレッドシートで「次の点検日」「交換推奨日」を一覧管理するだけでも効果的です。
ステップ④ センサー導入で状態監視
可能であれば、以下のようなセンサー機器の導入を検討しましょう:
- 振動センサー → モーターやポンプ異常
- 温度センサー → 軸受・制御盤の過熱兆候
- 電流センサー → モーターの過負荷検出
ステップ⑤ アラート通知やダッシュボード化
- Slackやメールで自動通知
- BIツール(例:Power BI、MotionBoard)で傾向分析
- スマートフォンでの状態監視も可能に
成功のためのポイント
- やりすぎないこと
必要以上に保全作業を増やしてしまうと、現場の負担になる。バランスが大事。 - 現場の声を取り入れる
センサーでは見えない“違和感”は現場の感覚が頼り。 - 記録の習慣化
トラブルの前に「何が起きていたか」をデータで残すことで、予兆分析が磨かれていく。
導入コストと効果のバランス
- センサー導入費用:数千円〜数万円/台
- 可動率向上による効果:生産量の安定、納期短縮、品質安定
初期費用はかかっても、年単位で見れば十分にペイできる投資です。
まとめ
可動率95%超を目指すには、現場の努力だけではなくデータに基づいた予防保全の仕組み化が欠かせません。最初はExcelでもOK。センサーやクラウドとの連携で段階的に進化させましょう。
“壊れてから直す”から“壊れる前に防ぐ”へ。今こそ、工場の保全体質を変えるチャンスです。