自動化装置の“通信プロトコル”トラブルを防ぐ事前準備

事例紹介

工場の自動化を進める際、「ロボットの動き」「センサーの配置」など目に見える部分に注目しがちです。しかし、実は現場で最もトラブルが多いのが通信プロトコルに関する問題です。

通信がうまくいかないと、どんなに高性能な機械も「動かない」「反応しない」「データが来ない」といった事態に直結します。本記事では、初心者の方にもわかりやすく、通信トラブルの原因と、事前にできる準備について解説します。

通信プロトコルとは?

通信プロトコルとは、機器同士が情報をやり取りするためのルールや言語のことです。

工場でよく使われるプロトコルには、以下のようなものがあります:

  • Ethernet/IP(オムロン・Rockwellなど)
  • PROFINET(シーメンス系)
  • Modbus(PLC間通信に多い)
  • OPC UA(異なるメーカー間の統合向け)

プロトコルが合っていなければ、「会話はしているが通じていない」という状態に。これはトラブルの大きな原因になります。

よくあるトラブル例

① PLCとセンサーの通信ができない
→ プロトコルが非対応、または設定ミス。たとえば、センサーがModbus RTUなのに、PLCがEthernet/IPにしか対応していないなど。

② データは届くが内容が読めない
→ 通信は成立しているが、データ形式(エンディアンや構造体など)の違いで正しく解析できない。

③ 他の設備を導入したら通信が不安定に
→ 同一ネットワーク内での通信量過多や、プロトコル競合、IPアドレスの重複など。

事前準備①:機器の対応プロトコルを確認

まず最初にやるべきは、導入予定の機器がどの通信方式に対応しているかを確認することです。

  • PLC、センサー、ロボット、表示器など、すべての機器の仕様書を確認
  • プロトコル、通信速度、接続ポート(RJ45、RS-485など)も要チェック
  • メーカーが異なる場合は、共通プロトコルを選定(例:OPC UA、Modbus TCP)

導入前に「接続できない」という事態を避けるための基本中の基本です。

事前準備②:ネットワーク構成を図で整理

通信トラブルの多くは「誰が誰と通信しているのか不明」な状態で起こります。

そのため、以下のようなネットワーク図を作っておくと、導入時・保守時に非常に役立ちます。

  • IPアドレスとMACアドレスの一覧
  • 通信経路(スイッチングハブ、ルーターの配置)
  • プロトコルごとのグループ化(例:EtherCATは専用網に)

この作業により、「どこが原因か?」の特定が格段に速くなります。

事前準備③:ゲートウェイ・変換機の検討

どうしても異なるプロトコルの機器を使わざるを得ない場合は、ゲートウェイと呼ばれる変換機器を使うことで対応可能です。

たとえば:

  • Modbus RTU ⇔ Modbus TCP
  • PROFINET ⇔ Ethernet/IP
  • シリアル通信 ⇔ LAN変換

ただし、ゲートウェイを入れると通信遅延トラブル時の分かりにくさが発生するため、最後の手段として考えるのがベストです。

事前準備④:テスト環境を作る

導入前に、できれば仮想的なテスト環境を用意し、通信確認を行うのが理想です。

  • ソフトPLCやシミュレータで通信確認
  • データ送受信が正常かログで確認
  • 複数台同時通信の負荷テストも行う

これにより、本番環境での“つながらない”リスクを事前に回避できます。

まとめ:「通信」は自動化の基盤である

自動化における“通信”は、設備が協力して動作するための言語のようなものです。

トラブルの多くは「事前確認不足」「設定ミス」「構成の複雑化」によって起こります。
だからこそ、導入前にプロトコルの整理と確認、ネットワーク図の作成、必要に応じた変換機器の検討といった準備が重要になります。

最新設備やAIを導入する前に、まずは「通信が安定しているか?」をチェックする。
それこそが、トラブルゼロの自動化現場づくりの第一歩です。

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