工場の保守・点検・メンテナンス業務において、「〇〇さんしかわからない」「あの設備だけはベテランにしか触れない」といった属人化は、今も多くの現場で課題となっています。
特に操作パネルの表示内容や配置が設備ごとにバラバラである場合、操作ミスや引き継ぎ不足の原因になりやすく、結果として生産性や安全性に悪影響を及ぼします。
そこで注目されているのが、「操作パネルの共通化」による属人性の排除です。本記事では、その考え方と実現方法、導入によるメリットを初心者の方にもわかりやすく解説します。
属人性とは何か?
属人性とは、業務や判断が特定の人に依存しており、その人がいなければ仕事が進まない状態のことです。
特にメンテナンスにおいては、
- 表示メニューの読み方が機種ごとに異なる
- ボタン配置や操作手順が設備ごとに違う
- トラブル時の対処方法が記憶ベースになっている
といった要素が重なり、「経験者だけが理解できる現場」になってしまうリスクがあります。
操作パネル共通化の基本とは?
操作パネルの共通化とは、設備やメーカーが異なっていても、表示レイアウト・操作項目・メッセージ文言などを統一することを指します。
具体的には以下のような要素を整備します。
- 画面レイアウトの統一(上部:ステータス/中央:操作ボタン/下部:ログなど)
- 用語の統一(例:「稼働中」「停止中」「異常発生」などを統一した表現で)
- 操作手順の共通化(スタート/ストップのフローを統一)
- 警告・アラート文の書き方の統一(文調や順序)
これにより、機械の種類が変わっても、「いつもの操作感」で対応できるようになります。
導入メリット①:新人でも即対応できる
共通化されたパネルであれば、新人でも短期間の教育で複数機種の操作・保守が可能になります。
操作手順を覚えるのではなく、「画面を見れば分かる」構成になることで、教育コストを大幅に削減できます。
導入メリット②:引き継ぎがスムーズ
属人性の大きな課題は、「担当者が変わるたびに混乱が起きる」こと。
操作パネルが統一されていれば、マニュアルや口頭説明が不要になり、現場の安定稼働に直結します。
導入メリット③:トラブル対応の標準化
アラートや警告の文言が統一されていれば、発生時の対応フローも共通化できます。
「エラーコード〇〇=部品詰まり」「エラー△△=温度異常」など、対処がマニュアル化しやすくなります。
共通化を実現するためのステップ
- 1. 現状のパネル画面を調査・棚卸し
どの設備にどんな表示がされているか、レイアウト・表現・操作手順を比較します。 - 2. 統一ガイドラインを作成
レイアウト設計・用語ルール・操作順序などを定めた共通設計ルールをつくります。 - 3. 改修優先順位の決定
現場負荷の高い機械や、更新タイミングが近い設備から順に改修していきます。 - 4. 定着のための教育とマニュアル更新
操作マニュアルや社内ルールも共通化に合わせてアップデートします。
導入事例:中小製造業での効果
ある金属加工メーカーでは、5種類以上の異なるNC機の操作画面を、共通テンプレートに切り替えました。
結果として:
- 操作ミスが月10件 → 月1件以下に激減
- 新人教育期間が平均1ヶ月 → 2週間に短縮
- ベテラン退職後も引き継ぎがスムーズに
といった成果が出ており、「ヒト依存から現場標準へ」の大きな一歩となりました。
まとめ:「見ればわかる操作」が、属人性をなくす
操作パネルの共通化は、単なる見た目の変更ではありません。
それは、「誰が見ても・誰が使っても分かる現場」をつくるための、もっとも実践的で効果的な手法の一つです。
自動化が進んでも、操作や保守が“人間の仕事”である限り、属人性の排除は避けて通れません。
だからこそ、まずは「操作パネル」から。共通化は、強い現場づくりの第一歩です。