工場の自動化設備に欠かせない制御盤。しかし、設計段階で温度管理やノイズ対策が不十分だと、制御機器の誤作動や寿命の短縮、最悪の場合はライン停止といった深刻なトラブルを引き起こします。
初心者でも理解しやすいように、今回は制御盤設計で押さえておくべき「温度上昇対策」と「ノイズ対策」の基本ポイントを解説します。
制御盤内は“熱がこもる場所”
制御盤には電源装置、PLC、インバータ、リレーなど、発熱を伴う機器が多数搭載されます。これらが密集して動作すると、内部温度は外気温より10~20℃以上上昇することもあり、電子部品にとっては大きな負担です。
特に夏場は注意が必要で、想定を超える温度上昇により機器が停止したり、誤動作を起こす事例が後を絶ちません。
温度上昇を防ぐ設計の基本
制御盤の温度対策には、以下のような設計配慮が有効です。
放熱を考慮したレイアウト
発熱量の大きい装置(インバータや電源)は上部ではなく下部や側面に配置し、熱がこもりにくいようにします。ヒートシンク付きの機器は空間を確保して熱放散しやすくすることも重要です。
放熱ファンや換気口の設置
盤内に放熱ファンや換気フィルターを取り付けることで、強制的に空気を循環させ、温度上昇を抑えます。特に高温環境ではクーラー付きの制御盤も有効です。
温度センサーの設置
盤内に温度センサーを取り付け、一定温度を超えたらアラートを出したりファンを作動させる仕組みにすることで、安定稼働を維持できます。
意外と多いノイズによる誤動作
制御盤内では、インバータやリレーなどのスイッチング動作により、電磁ノイズ(EMI)が発生します。このノイズが隣接するケーブルや装置に伝播すると、PLCやセンサーの誤動作を引き起こすリスクがあります。
また、外部の雷サージやアース不良もノイズの原因となるため、回路設計段階での対策が不可欠です。
ノイズを防ぐ設計の基本
ノイズ対策としては、以下のような工夫が効果的です。
信号線と電源線を分離
強電(AC電源)と弱電(信号線)は物理的に離して配線します。同一ルートを通すときは金属ダクトで仕切る、あるいはシールドケーブルを使うことが有効です。
接地(アース)を適切に取る
制御盤のシャーシアースや信号用アースを正しく施工し、ノイズの逃げ道を確保することで感電防止や誤作動の回避が可能になります。
フェライトコアやノイズフィルタの活用
ノイズが乗りやすいケーブルにフェライトコアを通したり、電源ラインにノイズフィルターを入れることで、不要な高周波成分を吸収できます。
まとめ:安全な制御盤設計のために
制御盤のトラブルは、目に見えない「温度」と「ノイズ」が原因となるケースが多く、対策を怠ると生産ライン全体に影響を及ぼします。システム全体の安定稼働を支えるためにも、設計段階から熱管理とノイズ対策を意識することが大切です。
初期のひと手間が、将来のトラブル回避とコスト削減につながることを忘れないようにしましょう。