冷却装置や排気ラインも忘れない。補助設備の自動化設計

事例紹介

自動化というと、ロボットや搬送装置、PLC制御などメインの生産設備に目が向きがちですが、見落としてはいけないのが冷却装置や排気ラインといった補助設備の自動化です。

これらは一見“脇役”に見えますが、現場の稼働率や品質安定、省エネルギーにおいて重要な役割を果たしています。本記事では、補助設備の自動化をどう設計するべきか、初心者にもわかりやすく解説します。

補助設備とは?

補助設備とは、生産の直接工程には関わらないものの、稼働を支えるために必要な周辺装置のことです。具体的には以下のようなものがあります。

  • 冷却装置(チラー、水冷機、ファンなど)
  • 排気・換気装置(ダクト、ファン、集塵機など)
  • コンプレッサー、給排水システム
  • 温湿度管理機器、空調設備

これらの装置が停止すると、製造装置がオーバーヒートしたり、作業環境が悪化したりして、間接的に生産が止まる可能性があります。

なぜ補助設備の自動化が必要か?

① 異常検知の自動化で事故を防ぐ
冷却水の温度が異常に高い、排気が詰まっているといった状態をセンサーで監視し、しきい値を超えたら自動停止やアラームを出すことで、設備や製品を守ることができます。

② 無駄な稼働を防いで省エネ化
「常にフル稼働」している補助設備は意外と多く、必要なときだけ稼働させることで電力コストの削減が可能です。

③ 作業者の手間を減らせる
例えば、始業時に手動でバルブを開ける、排気ファンをONにする、という作業が自動でラインと連動して行えるようになります。

実践的な自動化ポイント

冷却装置の自動制御

  • チラーの冷却水温をセンサーで監視し、必要に応じてインバータ制御で出力を可変
  • 生産装置と連動して、稼働時だけ冷却ON、停止時は待機
  • 冷媒不足や異常圧力を自動検知してアラームを発報

排気・換気の自動制御

  • 作業エリアのVOC(揮発性有機化合物)濃度や温湿度をモニタリングし、必要時のみ排気ファンを運転
  • 加工装置のドア開閉と連動して排気をON/OFF
  • フィルターの目詰まりを差圧センサーで検知し、清掃タイミングを通知

集塵機の運用最適化

  • 作業台ごとにダンパーを設け、使用場所だけに排気を集中
  • フル運転せず、パワー制御+エリア制御でエネルギー効率を最適化

事例:金属加工工場での排気自動化

ある金属加工工場では、切削油のミストが作業空間に充満しやすく、換気装置は常に最大出力で運転していました。

そこで以下のような自動化設計を導入。

  • 加工装置の稼働時のみ排気ファンをON
  • ミスト濃度センサーを設置し、濃度に応じてファンの出力を制御
  • 清掃タイミングを自動通知

結果として、

  • 電力使用量を約30%削減
  • 作業環境の改善と臭気クレームの減少
  • 清掃忘れによる目詰まり事故がゼロに

といった効果が得られました。

設計時の注意点

補助設備の自動化は、やみくもに自動化するのではなく、以下の点に注意して設計することが重要です。

  • ライン連動を意識する:生産設備の動作信号と連携し、不要時の稼働を防止
  • センサー設置場所の最適化:温度・圧力・濃度など、意味のあるポイントに配置
  • 異常時のフェイルセーフ設計:排気停止=爆発や熱暴走に直結することも。自動停止よりも“警報のみ”が適切な場合もあり

まとめ:補助設備こそ“見えない要”

冷却装置や排気ラインといった補助設備は、「メイン工程ではないから後回し」になりがちですが、安定した生産を支える土台として非常に重要です。

補助設備を自動化することで、作業者の負担軽減、エネルギー削減、異常検知の高度化など、多くのメリットが得られます。
“主役”だけでなく、“裏方”にも目を向けた設計が、真の工場自動化を実現する第一歩なのです。

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