製造現場の設備制御を担うPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は、リアルタイム性と安定性が求められる現場の要です。一方、経営・管理部門ではクラウドシステムを活用してデータ可視化や分析を進めたいというニーズが高まっています。
しかし、PLCは基本的に“閉じたネットワーク”で動くもの。セキュリティや通信方式の違いから、直接クラウドにデータを送るのは容易ではありません。
そこで必要になるのが、PLCとクラウドを安全かつスムーズにつなぐ“中継ソリューション”です。
中継ソリューションとは?その役割と構成
PLCとクラウドの橋渡しを担う中継ソリューションには、以下の役割があります。
- PLCの制御データを定期的に取得
- フォーマット変換(バイナリ→JSONなど)
- 不要なデータのフィルタリング・集約
- 暗号化やセキュリティトンネルを通じてクラウド送信
- クラウド側のAPI仕様に合わせた変換処理
一般的には、以下のような構成で導入されます。
- PLC → IoTゲートウェイ or エッジデバイス → クラウド
この中間にある“IoTゲートウェイ”や“エッジサーバー”が、現場とクラウドの橋渡しを担います。
代表的な中継ソリューションの種類
中継機能を果たすための代表的なソリューションには以下があります。
- IoTゲートウェイ機器(例:OPC UA対応、Edgecross、Advantechなど)
→ PLCのプロトコルを認識し、クラウド向けに変換可能 - エッジコンピュータ(Raspberry Pi型~産業用PC)
→ PythonやNode-REDを使って柔軟なデータ処理が可能 - クラウド連携ソフトウェア(例:MQTT、Kepware、Ignition)
→ データ変換・通信の設定をGUIで容易に行える - 5Gルーター+VPN構成
→ 移動式設備やリモート拠点から安全にクラウドと接続可能
実例:PLCとAWS IoTの連携事例
ある自動車部品工場では、PLC(Mitsubishi製)とクラウド上のAWS IoT Coreを連携することで、設備の稼働データを可視化したいという課題がありました。
導入構成:
- PLC→Ethernet通信→IoTゲートウェイ(OPC UA対応)
- ゲートウェイでデータをMQTT形式に変換
- AWS IoT Coreで受信、ダッシュボードへ反映
これにより、ラインの稼働率や停止原因を本社からもリアルタイムに把握でき、設備トラブルの初動対応が平均30分短縮されました。
セキュリティ面の注意点
現場とクラウドをつなぐ際、必ず以下の点に注意する必要があります。
- VPNやTLSを使った暗号化通信
- ファイアウォールで通信範囲を制限
- 読み取り専用アクセスの原則
- 定期的なファームウェアアップデート
「制御系ネットワークを守る」ことは、生産そのものを守ること。セキュリティ対策と運用ルールの整備が不可欠です。
導入のポイント
- PoC(試験導入)を小規模から始める
- 既存PLCの通信仕様を把握しておく(例:MCプロトコル、Modbus、OPC UAなど)
- データを“全部取る”のではなく、“意味のある情報だけ”を抽出
- MESやSCADAとの連携も視野に入れる
「やってみて使えるものか」ではなく、「現場が実際に使い続けられるか」を軸に判断すると、継続的に運用しやすくなります。
まとめ:現場とクラウドをつなぐのは“翻訳者”の役目
PLCとクラウドは、それぞれ異なる世界の仕組みで動いています。その“言葉”を翻訳し、データを正しく届けるのが中継ソリューションです。
一歩進んだスマート工場化を目指すなら、「つなぐ」技術にこそ投資と工夫が必要です。クラウド連携を諦めず、最適な中継ソリューションを活用して、現場を次のステージへ進化させましょう。