製造現場では日々、膨大なデータが生まれています。
設備の稼働時間、製品の不良率、人の動き、原材料の使用量──これらは現場改善のためだけでなく、実は“経営判断”にも役立つ資産です。
その橋渡し役となるのが「BIツール(Business Intelligence)」です。
さらに最近では、“自社専用にカスタマイズしたBIツール”を活用し、製造データを経営に活かす企業が増えています。
BIツールとは?製造業でも活用が進む理由
BIツールとは、データを集約・分析し、グラフやダッシュボードで「見える化」するためのツールです。Excelでは扱いきれないような大量の情報をリアルタイムで整理し、誰でもわかる形にしてくれます。
製造業での注目ポイント:
- 設備やセンサーデータを“自動で”取り込める
- 計画と実績の差を“可視化”できる
- 日報・報告書の自動生成が可能
- 管理職や経営層にも“直感的に”伝えられる
カスタムBIツールが“現場仕様”にフィットする
市販のBIツール(Power BI、Tableauなど)も便利ですが、現場と経営の橋渡しには「カスタム化」が非常に効果的です。
- ライン別・工程別に分かれた画面設計
- 自社独自のKPI(稼働率、不良率、ロス率など)に対応
- PLCやMESとの直接連携(APIやCSV)
- スマホや大型モニターでも見やすいUI
このようなカスタマイズにより、“操作しやすく、使われ続ける”BI環境が構築できます。
実例①:工場長が使う「日報ダッシュボード」
ある中堅製造業では、これまで工場長がExcelで日報を作成していました。
そこでカスタムBIツールを導入し、
- 各ラインの稼働状況をリアルタイム表示
- 前日比・週平均などの自動算出
- 不良品数の増加を色でアラート表示
という仕組みに変更。
結果として、毎日の報告作業が1時間→10分に短縮され、空いた時間を現場巡回や改善活動に使えるようになりました。
実例②:経営層が使う「KPI集約パネル」
別の企業では、工場ごとのデータを本社で集計するのに2〜3日かかっていました。
そこでカスタムBIを導入し、
- 拠点別の生産数・不良率・在庫数を即時表示
- 前年同月比、目標進捗率などを自動計算
- 会議資料としてそのままPDF化も可能
といった機能を実装。
経営層が「翌朝には全体像を把握」できる体制が整いました。
導入時のポイント
- “見せたい人”を明確にする(現場用と経営用で設計は変わる)
- データの“粒度”と“鮮度”を調整する(1秒単位のデータが必要か?日単位で十分か?)
- 使われる仕組みにする(操作が難しいと、現場で定着しない)
- APIやフォーマットの“橋渡し設計”を最初に行う(MES・SCADAなどとの接続)
技術よりも「運用に耐える設計」が、成功のカギとなります。
今後の展望:AIや予測分析との連携へ
カスタムBIは、“見るだけ”のツールでは終わりません。今後は、
- 生産予測、在庫最適化などのAIモデルとの連携
- 故障傾向の検出と保全スケジュールへの応用
- 顧客クレームと製造条件の相関分析
など、さらに“経営に直結する活用”へと進化していきます。
まとめ:現場データは“数字”から“意思決定の材料”へ
製造現場のデータは、適切に整理・分析すれば、経営にとっても強力な武器になります。
その架け橋となるのが、カスタムBIツールです。
Excelで終わっていた現場の数字を、経営判断に活かす──
それが「見える化のその先」への第一歩です。