工場の自動化が進む中で、設備や装置の「管理のあり方」も変化を求められています。従来の運用では、紙の帳票やエクセルでの管理が主流でしたが、これでは設備の状態をリアルタイムに把握することが困難でした。
そこで注目されているのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とデジタルアセット管理(Digital Asset Management:以下DAM)の統合です。この組み合わせにより、設備や装置の状態・履歴・保守情報を一元的に管理し、より高度な運用が可能になります。
この記事では、IoTとDAMを組み合わせた自動化運用の最新動向について、初心者にもわかりやすく解説します。
IoTとデジタルアセット管理とは?
まず、それぞれの技術について簡単に整理しましょう。
IoT:
センサーや通信技術を用いて、設備・機械・環境からリアルタイムでデータを収集・送信する仕組みです。温度、振動、稼働時間、故障履歴などを常時モニタリングできます。
DAM(デジタルアセット管理):
機械や設備、工具、備品などの情報を一元的にデータベースで管理するシステムです。部品の構成情報やマニュアル、保守履歴、設置場所なども記録されます。
これらを統合すると、「今、どこに何があり、どんな状態か」をリアルタイムで把握しつつ、「その資産の過去・未来も管理できる」という理想的な体制が実現します。
統合によって実現する主なメリット
IoTとDAMを統合することで、以下のようなメリットが得られます。
- 設備の稼働状況をリアルタイムで監視
- 異常兆候を早期に検知し、予防保全が可能
- 設備情報(型番・設置日・メンテ履歴)を即時参照
- 設備の入替・廃棄計画がスムーズに
- 属人的な情報から“仕組み化”された管理体制へ移行
導入の実践例①:稼働監視+履歴一元化
ある中規模工場では、生産設備の各ラインにIoTセンサーを取り付け、振動と稼働状況をモニタリングしています。そのデータはDAMシステムに連携され、以下のような活用が行われています。
- 設備IDごとに最新の稼働データを表示
- 異常値があれば即時アラート
- 点検時期や交換部品の履歴も自動で管理
これにより、トラブルが起こる前に対処できる体制が整いました。
導入の実践例②:遠隔拠点の設備情報を統合
多拠点展開する企業では、各工場の管理スタイルがバラバラで、情報の共有に時間がかかっていました。
IoT+DAMを導入したことで、拠点ごとの設備台帳や稼働状況がクラウド上に統合され、本社側でもリアルタイムで状況把握が可能に。
- どの工場にどの型番の装置があるか
- 故障履歴や保守実績の比較分析
- 設備導入からの費用対効果シミュレーション
といった活用が可能になり、経営判断のスピードも向上しました。
導入時のポイントと課題
導入を成功させるためには、以下のポイントに注意が必要です。
- 1. 現場の設備に合わせたIoTデバイスの選定
- 2. データを正確に連携させるシステム基盤(API、クラウドなど)の設計
- 3. 登録データの精度とメンテナンス体制の確保
- 4. 操作するユーザーへの教育・簡易UIの設計
また、「何を管理したいのか」を明確にすることが、システムの過剰投資を防ぐためにも重要です。
まとめ:自動化の次は“情報の見える化”へ
工場の自動化は「動かす」フェーズから、「正しく把握し、最適に管理する」フェーズへと進んでいます。IoTとデジタルアセット管理の統合は、まさにこの情報化の基盤となる技術です。
リアルタイムの設備状態、過去の履歴、将来の保全までを一気通貫で管理できる仕組みを整えることで、トラブルの予防、生産性の向上、人手不足への対応など、さまざまな課題に立ち向かうことが可能になります。
まずは小さなユニットや一部工程からスタートし、スモールスタートで運用を始めてみるのが成功の鍵です。