自動化導入後の生産性モニタリング方法と改善手法

事例紹介

自動化設備を導入する目的は「生産性の向上」にありますが、導入後に本当に効果が出ているのかどうかを正確に把握している企業は意外と少なくありません。

せっかく投資した自動化が「導入しただけ」で終わってしまっては、期待していた成果は得られません。そこで重要になるのが、「生産性モニタリング」と、それに基づく「改善活動」です。

この記事では、自動化導入後の効果を正しく測定し、現場で実際に改善へとつなげていく方法を、初心者にもわかりやすく解説します。


なぜ生産性モニタリングが必要なのか?

● 自動化=即成果ではない

自動化によって機械が作業を担うようになっても、その運用が最適でなければ、生産性は上がらないどころか逆に悪化することもあります。

例えば、設備が頻繁に停止していたり、段取り替えに時間がかかっていたりすると、自動化の恩恵が活かされません。


● ボトルネックを発見し、改善サイクルを回す

モニタリングによって現状を「見える化」し、どこにロスがあるか改善すべき点は何かを把握することが、継続的な生産性向上に直結します。


生産性モニタリングの基本指標

以下のような定量的な指標をもとに、客観的に生産性を把握します。

① 稼働率(稼働時間 ÷ 設備可動可能時間)

設備がどれだけ稼働しているかを示します。定期保守や段取り替えの時間も考慮することで、ロス時間の正確な把握が可能です。


② サイクルタイム(1個あたりの加工・製造にかかる時間)

実測したサイクルタイムと設計値を比較することで、設備の効率や調整状態の良し悪しを判断できます。


③ OEE(総合設備効率:Availability × Performance × Quality)

設備の稼働時間、スピード、品質を組み合わせた指標。工場全体のパフォーマンス評価に活用できます。


④ 生産数量・不良率

実際の生産数、不良数を日単位・時間単位でモニタリングし、生産計画とのギャップ品質問題の発生傾向を把握します。


モニタリングの実践方法

● IoTセンサーの活用

各種センサー(電流センサー、加速度センサー、カメラ、温度センサーなど)を用いて、設備の稼働状況や状態を自動収集します。


● PLC・MESとの連携

PLC(シーケンサー)からデータを取得し、稼働時間、停止回数、アラーム履歴などを蓄積。MES(製造実行システム)と組み合わせれば、生産進捗のリアルタイム把握が可能です。


● ダッシュボードの活用

収集したデータをグラフやチャートで可視化し、現場や管理者が一目で状況を把握できるようにします。改善活動にも活用しやすくなります。


改善手法とポイント

モニタリングで得たデータを活用し、以下のような改善活動を行います。

① 小さな停止ロスを減らす

短時間の停止やセンサー異常、材料切れなどを記録・分析し、頻度の高いロスを先に潰すことで大きな効果を生み出します。


② チョコ停(頻発する小停止)の原因分析

人の作業介入が必要なポイントを抽出し、自動化やマニュアル改善によって削減を図ります。


③ 品質ロスの削減

不良品の発生タイミングや条件を分析し、設備の調整精度、材料のばらつき、作業条件などに着目した再調整・教育を実施します。


④ 生産スケジュールの最適化

実際の生産データに基づいて、ラインバランスや段取りの順番、工程間のバッファ設計を見直し、ムリ・ムダ・ムラのない運用を目指します。


導入事例:樹脂成形工場

ある中小製造業では、成形機に電力センサーとIoTゲートウェイを導入し、稼働状況と電力量を可視化。

  • 稼働率の低さの原因が、金型交換時の段取り時間の長さだと判明
  • 作業者の手順を見直し、金型交換の標準作業を再構築
  • 結果:1日あたりの生産数が15%向上

データがあるから改善ができる」という好例です。


モニタリングと改善を継続させるコツ

ポイント内容
KPIの明確化目標となる数値(稼働率、OEEなど)を全員で共有
現場参加型の改善改善案は現場の声から。無理な改革は逆効果
スモールスタートまずは1ライン、1工程から始めて横展開
改善結果の可視化成果はグラフや掲示物で「見える化」し、モチベーションにつなげる

まとめ

自動化の導入はゴールではなく、スタートです。モニタリングを通じて生産現場の“見える化”を実現し、そのデータをもとに改善サイクルを回すことが、生産性向上には不可欠です。

“測れないものは改善できない”という言葉の通り、まずは数字を「見る」ことからはじめましょう。そうすれば、投資した自動化設備の真価が発揮されるはずです。

見て、気づき、動く。それこそが、現場の力を引き出す最も確かな方法なのです。

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