従来、製品の品質確認は最終検査や抜き取り検査で行われてきました。
しかしそれでは、「不良品がすでに流出していた」「工程途中でムダな加工をしていた」といった問題が後から発覚することも。
その解決策として注目されているのが——
工程内検査の自動化によるリアルタイム品質保証です。
この記事では、初心者にもわかりやすく、工程内検査を自動化するメリットや導入のポイントを解説します。
工程内検査とは?
工程内検査とは、製品を完成させる途中段階で、各工程ごとに品質確認を行うことです。
例:
- 部品加工後の寸法測定
- 溶接後の強度確認
- 組立途中の締付トルク確認
これらをその都度・自動でチェックすることで、「不良の見逃し」や「手戻り」の発生を未然に防ぐことができます。
なぜ“自動化”が重要なのか?
人による工程内検査には、いくつかの課題があります。
- 検査の抜け・見落としがある
- 測定のばらつき(作業者差)がある
- 記録が手書きで残りにくい
- 作業時間がかかる
自動化することで、これらの課題を以下のように解消できます。
- すべての製品を確実にチェック(全数検査)
- 一定基準での判定(人によるばらつきゼロ)
- 記録がデジタル保存され、トレーサビリティにも対応
- スループットを下げずに品質保証
工程内検査自動化の主な手法
実際にどのような技術が使われているのかを紹介します。
画像処理カメラ+AI判定
- 傷・欠け・異物混入・色むらなどの外観異常をリアルタイムで検出
- AIによってOK/NGを自動判断し、基準の更新も容易
寸法測定用レーザー/センサー
- 加工後の穴径、長さ、高さなどを非接触で正確に測定
- 測定値をデジタルで記録・管理可能
トルクセンサー付き電動工具
- 組立時の締付トルク・回転角を自動記録
- 基準外はその場でアラートが出るため不良流出なし
IoT+クラウド連携
- 測定データをリアルタイムでクラウドに送信し、品質管理部門でも即確認可能
- 異常が出たときの自動停止・自動通知にも対応
導入事例:プラスチック成形工場での取り組み
あるプラスチック成形工場では、バリや変形によるクレームが問題となっていました。
そこで以下の工程内検査自動化を導入。
- 成形直後に画像処理でバリチェック
- 重量センサーで樹脂注入量の過不足を検出
- NG品は自動で排出し、履歴はクラウド保存
結果として、
- クレーム件数が80%減
- 検査工数が1/3に削減
- 海外顧客への品質アピールにも成功
導入のポイントと注意点
✔ 適切な検査ポイントを見極める
すべての工程に検査を入れるのは非現実的。
不良が起きやすいポイント、またはその後の工程に重大な影響を与える場所を選びます。
✔ 判定基準を明確に・数値化しておく
画像AIやセンサーの判定ロジックを組むには、OK/NGの数値基準が必要です。
✔ 記録・保存方法も計画する
ただ判定するだけでなく、「いつ・どこで・どんな測定結果だったか」を後から確認できる仕組み(ログ保存)も同時に設計する必要があります。
工程内検査の自動化は、未来の品質保証
最終検査だけでは、不良は防げません。
これからの品質保証は、工程内の“リアルタイム監視と判断”によって支えられます。
まとめ
- 工程ごとの検査で、ムダな加工や不良流出を防ぐ
- 自動化により、常に安定した品質チェックが可能に
- デジタル記録により、トレーサビリティも確保
製造ラインのどこかに「自動の目と判断」を加えること。
それが、“止めない・流さない”品質保証への第一歩です。