製造現場で起きる不良・トラブルの多くは、実は「人のミス」に起因しています。
作業ミス、設定ミス、確認漏れ、報告忘れなど、いわゆるヒューマンエラーです。
もちろん人間である以上、完全にミスをゼロにするのは難しい——
しかし、それでも「起きにくくする仕組み」を整えることは可能です。
この記事では、初心者でも理解しやすいように「自動化によるヒューマンエラー低減」の実践的な方法を解説します。
ヒューマンエラーが起きる主な原因
まず、どんな場面でミスが発生しているかを整理してみましょう。
- 操作ミス:押すボタンを間違える、段取りを間違える
- 判断ミス:良否の判断基準があいまい、曖昧な目視検査
- 伝達ミス:口頭の申し送りでの抜け・誤解
- 確認漏れ:チェックリストや記録が形式的になっている
これらは個人の能力ではなく、仕組みや環境に依存することが多いのがポイントです。
自動化でミスを「起きなくする」考え方
ヒューマンエラーを防ぐには、次の2つの視点で自動化を取り入れることが有効です。
人が介入しないようにする(排除)
そもそもミスの可能性がある作業を、人の手から機械に置き換えるという考え方です。
人の判断や操作を“支援”する(補助)
人が介入する必要がある場面でも、ミスが起きにくくする工夫や仕組みを組み込むことができます。
実践手法①:誤操作防止のためのインターフェース設計
人が操作する装置においては、HMI(操作画面)やスイッチ配置の工夫でミスを防げます。
- ボタンの色・形・配置を意味づけて統一
- 「実行しますか?」の確認ポップアップを設ける
- 作業手順を動画や図で表示しながら誘導する
特に、判断に迷う余地を残さないUIは非常に効果的です。
実践手法②:画像処理・センサーによる確認作業の自動化
よくあるのが、製品の良否判断を目視検査で行っているケース。
ここに画像処理カメラやセンサーを導入することで、判断を自動化できます。
- 寸法やキズの有無を画像で判定
- 通電・通気・重量などをセンサーで検知
- NG品は自動排出され、人の判断が不要に
これにより“作業者によって判断がブレる”問題を解消できます。
実践手法③:ポカヨケ(間違え防止)を自動化に組み込む
ポカヨケとは、「間違えても動かない」「間違えるとすぐにわかる」仕組みのことです。
例:
- 部品の向きを間違えると装置に入らないように設計
- 手順をスキップすると次の工程に進めないシステム
- 作業履歴が自動で残るため、確認忘れがない
これも自動化と組み合わせることで、人が意識しなくても間違いにくい工程になります。
実践手法④:帳票・報告ミスの自動化
日報・点検記録・報告書など、書類の記入ミスや提出忘れもヒューマンエラーの一種です。
これを改善するには、
- 点検作業と記録が連動するタブレットの導入
- センサーと連動して自動記録(例:温度・圧力)
- 報告内容の“テンプレート化”で誤記を防止
「書く作業を減らす」「自動で記録される」という視点がカギです。
導入事例:電子部品工場での改善
ある電子部品メーカーでは、目視検査での不良見逃しが問題となっていました。
そこで、検査工程に画像処理+自動選別装置を導入した結果、
- 検査ミスが月20件 → 月1件未満に減少
- 新人でも同じ品質レベルで作業可能に
- 検査時間が30%短縮し、作業負荷も軽減
つまり、ヒューマンエラーの“原因”ではなく、“構造”に手を入れたことが成功のポイントです。
まとめ:ミスは防げる。仕組みがあれば。
ヒューマンエラーは、「人の注意力や技術不足」だけではなく、設計や仕組みの不備によって起こります。
そしてその多くは、自動化の力で防止・削減することが可能です。
- 操作画面の工夫
- 判断工程の自動化
- 記録のデジタル化
- ポカヨケの自動組み込み
これらをひとつずつ導入していくことで、「ヒューマンエラーが起きにくい現場」から、「ヒューマンエラーが起きない現場」へと進化していけます。
あなたの工場でも、まずは1つの工程から“ミスが起きない仕組み”を作ってみてください。