製造業において、サイクルタイム(1工程あたりの処理時間)の短縮は、生産性向上と納期短縮に直結する重要なテーマです。特に中小工場では、限られたスペースと人員の中でいかに効率を上げるかが経営の鍵になります。そのために有効な手段が「設備の配置見直し」と「自動化対応」です。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく、サイクルタイム短縮を目的とした現場改善の進め方を実例を交えて解説します。
サイクルタイムとは?
サイクルタイムとは、1つの製品が1工程を完了するまでにかかる平均時間を指します。これが短ければ短いほど、生産スピードが上がり、設備の稼働効率や人件費効率も向上します。
例:
- 1工程あたり60秒 → 1時間あたり60個
- 1工程あたり45秒 → 1時間あたり80個
15秒短縮するだけで、大きな差になります。
なぜ設備配置が重要なのか?
現場では「作業そのもの」よりも、「移動・段取り・待ち時間」などの“非付加価値作業”がサイクルタイムを圧迫する原因になっているケースが多く見られます。
たとえば…
- 部品棚が遠い
- 次工程の装置が隣にない
- 作業者が無駄に移動している
これらはすべて「配置の最適化」で改善可能です。
設備配置見直しの基本ステップ
✔ ステップ1:現状分析(現場観察)
- 動線を図面に落とす
- 作業者の移動距離を記録
- ボトルネック工程の特定
✔ ステップ2:ムダの特定と課題化
- 二度手間の移動があるか?
- 同じ部品を複数ラインで取りに行っていないか?
- 複数人が同じスペースで交差していないか?
✔ ステップ3:レイアウト変更の検討
- 「U字型」や「一列型」などライン構成を再設計
- 部品棚や工具配置を「取りやすさ」で並び替え
- 無人搬送機(AGV)など導入を前提にした動線設計
自動化対応での短縮ポイント
✔ 材料供給の自動化
- 事前準備時間の短縮
- 作業者の手待ち時間削減
例:AGVによる部品自動供給で、補充時間をゼロに。
✔ 検査工程の自動化
- 品質確認にかかる時間削減
- ダブルチェックの手間削減
例:画像検査装置で検査スピードを3倍に。
✔ 搬送の自動化
- 工程間の中断防止
- ライン間の連携向上
例:コンベア+昇降装置で手渡し作業を廃止。
実例紹介
ある樹脂成形工場では、以下の改善を実施:
- 成形機のレイアウトを直線から「U字型」に変更
- 検査装置をライン末端に一体化
- 部品補充をAGVに自動化
結果:
- 作業者の移動距離を60%削減
- サイクルタイムを20秒短縮(約25%改善)
- 生産能力が月間1,000個分向上
成功のためのポイント
- “動いていない時間”に注目:作業者や装置が「何もしていない時間」が改善余地
- 現場の声を活かす:作業者の動きや癖を観察することで新たな気づきが得られる
- いきなり全体ではなく、1ラインから改善:効果検証がしやすく、社内説得にも使える
まとめ
サイクルタイム短縮は、特別な機械導入よりも、現場の「配置」と「流れ」を見直すことから始まります。さらに、自動化を組み合わせることで、継続的な効率化が実現できます。まずは現状を見える化し、少しずつ改善を重ねていくことが、生産性向上の第一歩です。