「繁忙期になると納期に追われてパンク寸前…」「人手が足りなくて生産が追いつかない」——そんな悩みを抱えている中小製造業の現場は少なくありません。
この問題を解決するキーワードが 「スループット最大化」です。そして、そのための最も有効な手段が “自動化” による工程の最適化です。
この記事では、初心者にもわかりやすく、スループット(単位時間あたりの生産量)を最大化するための自動化の考え方・導入手法・成功事例を解説します。
スループットとは?
スループットとは、単位時間あたりに製品が完成して出てくる速度のことを指します。製造業においては、生産性の核心です。
例えば:
- A社:1時間に50個生産
- B社:1時間に80個生産(同品質)
同じ設備・同じ人員でも、生産プロセスを見直すだけでこの差が生まれるのです。
なぜスループットが繁忙期に重要なのか?
- 限られた人員・設備で最大成果を出す
- 納期短縮・受注機会の確保
- 競合との差別化(レスポンスの速さ)
特に短納期依頼やイレギュラー注文が集中する繁忙期では、1ラインあたりの処理能力=売上に直結します。
スループットを阻害する「ムダ」の正体
スループットが上がらない主な原因は、工程内の「ムダ・ムラ・ムリ」です。
- ムダ:人や設備が何もしていない時間(待機、取りに行くなど)
- ムラ:工程ごとの作業時間にバラつきがある
- ムリ:人に過度な負荷がかかっている
これらを排除するために、自動化が有効なのです。
スループット最大化のための自動化アプローチ
✔ アプローチ①:ボトルネック工程の自動化
スループット改善は「ボトルネックから手をつける」のが鉄則です。
例:
- 組立工程に時間がかかっている → 協働ロボット導入
- 品質検査が詰まる → AI画像検査装置で高速化
✔ アプローチ②:搬送・供給の自動化
意外と見落とされがちなのが「材料の補充」「中間搬送」の時間ロス。
- AGV(自動搬送車)を使って、材料を定期供給
- コンベアで工程間搬送を自動化
これだけで“手待ち時間”を大幅に削減できます。
✔ アプローチ③:センサー&PLC制御の最適化
- 作業完了をセンサーで検出し、自動的に次工程へ移動
- 制御タイミングをPLCでミリ秒単位で最適化
たとえば、1回の工程時間を1秒短縮できれば、8時間稼働で数百個分の生産量差が生まれます。
✔ アプローチ④:作業者支援ツールの導入
完全自動化が難しい場合でも、
- ピッキングガイド
- トルク管理付き電動工具
- デジタル作業指示書
などで「人のミス・迷い」を減らすことでスループットは向上します。
実際の成功事例
✅ 樹脂成形メーカー(従業員25名)
課題:検査作業がボトルネックで、繁忙期に納期遅れが発生
対応:
- 画像認識AIを導入し、検査時間を1個あたり8秒→2秒へ短縮
- 判定基準を数値化して品質安定も実現
結果:
- スループットが約1.8倍に向上
- 検査員2名を別工程へ配置できた
- 納期遅延ゼロを半年間継続
スループット向上を阻む落とし穴と注意点
- 全部を自動化しようとしない → 効果の薄い工程から着手すると失敗しやすい
- 定量評価をしない → 時間・個数の変化を必ず記録し、改善効果を見える化
- 現場の声を無視する → オペレーターの協力が得られなければ運用が定着しない
小さく始めて大きく育てる
「いきなり高額な装置」はリスクが高いです。スループット向上の第一歩は、以下のような「小さな自動化」から。
- 卓上型の自動ねじ締め機(5万円〜)
- ワークを自動で搬送するスライド機構
- 作業開始タイミングを通知するタイマーアプリ
1工程ずつ、1秒ずつ。積み重ねが生産性の差を生み出します。
まとめ
スループットの最大化は、「高価なロボットを入れること」だけではありません。現場の工程を見直し、ボトルネックを絞り、ムダを一つずつ減らしていくことが鍵です。
繁忙期をチャンスに変えるためにも、今から準備を始めましょう。