製造業では長年、24時間稼働を実現するために「3直体制(早番・中番・夜勤)」が常識とされてきました。しかし、近年は人材確保の難しさや人件費高騰を背景に、夜間の無人運転体制への移行が注目されています。
「人がいなくても設備が動く」工場は、現実に実現可能です。本記事では、初心者でも理解できるように、夜間無人運転を構築するための考え方、導入ステップ、実際の成功事例をわかりやすく解説します。
なぜ「3直体制」からの脱却が必要なのか?
以下のような理由から、今、夜勤シフトの見直しが求められています。
- 人手不足:夜勤を嫌う若手が多く、採用が困難
- 人件費の増加:深夜手当や人材派遣費が経営を圧迫
- ワークライフバランス重視の流れ:離職防止の観点からも夜勤削減が重要
- 設備のIoT化・自動化の進展:夜間でもトラブル対応が可能に
夜間無人運転の基本構成とは?
夜間無人運転は、以下の要素を組み合わせて実現されます。
✔ 自動化された製造設備
- ロボットやNC機械が自律的に動作
- ワーク供給・排出まで自動化
✔ 監視・遠隔通知システム
- センサーとカメラで異常を検知
- 異常時はスマホへアラート通知
✔ 品質管理の自動化
- AI画像検査や重量センサーによる合否判定
- 不良品を自動で排出・記録
✔ データロギング・異常記録
- 生産ログ・エラー履歴を自動でクラウド保存
- 翌朝の分析や保全活動に活用
成功事例:金属加工工場(従業員40名)
■ 背景
夜勤の人材が集まらず、3直体制の維持が困難に。
■ 導入内容
- ワーク自動供給装置+パレットチェンジャーをNC旋盤に接続
- 映像監視+AI異常検知で夜間の人員配置ゼロに
- ログは翌朝ERPに自動連携し、進捗確認可能に
■ 結果
- 夜勤シフト廃止で年間約900万円の人件費削減
- 稼働率は維持しながら、従業員満足度も向上
- 新卒採用率が過去最高に(働き方改善が評価)
夜間無人化への5ステップ
ステップ①:ボトルネックと手作業の洗い出し
「夜間でも止まらず動くには?」を逆算で考える。
ステップ②:設備の自動化対象を選定
まずは工程のうち、人の手が要らない場所からスタート。
ステップ③:監視と通知の仕組みを整える
- Webカメラ+SlackやLINE通知
- センサーでエラーや停止を即把握
ステップ④:一晩で完結できる材料供給量を確保
- バー供給機や多段パレットによる長時間連続運転
ステップ⑤:早朝に結果をチェックする体制づくり
- 夜間ログをもとに翌日の不良率・歩留まりを分析
- トラブル発生時の復旧マニュアル整備も忘れずに
小規模工場でもできる「夜間無人」の工夫
- 自動停止機能つきの機械を導入
- Wi-Fiカメラで異常時の映像をスマホへ通知
- 台車ごと投入できる材料ストッカーをDIYで設置
- タイマー式の照明・換気制御を活用して省エネ化
よくある課題と対応策
課題 | 対策例 |
---|---|
不良品の混入が心配 | 画像検査や重量センサーの導入で代替 |
無人だとトラブルが心配 | 通知+翌朝の対処で実績を積み上げる |
導入コストが不安 | 中古機・レンタル・補助金の活用で負担軽減 |
まとめ
夜間無人運転は、ただの「省人化」ではありません。それは、人材難・働き方改革・コスト改善・品質安定といった課題を一気に解決する大きな変革です。
最初から全てを無人にする必要はありません。まずは「1ライン」「1設備」からでも、夜間の自動化に取り組むことで、新しい工場の姿が見えてきます。