「自動化したのに思ったほど成果が出ない」「改善が感覚頼りになっている」——そんな悩みを持つ製造現場は少なくありません。実は、自動化設備を導入するだけでは、生産性の向上は限られます。
真に強い工場をつくるためには、“データ”を活用した改善が不可欠です。つまり、「データ駆動型の分析力」が、自動化を“活かす力”になります。
本記事では、初心者にもわかりやすく、自動化ラインにおけるデータ活用と分析力強化の方法を解説します。
なぜ「データ分析」が必要なのか?
自動化ラインは、人手作業に比べて安定していますが、問題が起きたときの原因が見えにくくなる傾向があります。
たとえば:
- なぜか1日ごとの生産数にバラつきがある
- 設備は止まっていないのに歩留まりが下がる
- 不良品が出ても原因が特定できない
これらの課題は、“現場の感覚”ではなく“データ”で把握することで、再現性のある改善へとつながります。
どんなデータを取ればいいのか?
まずは以下のような基本的なデータを収集することから始めましょう。
データ項目 | 内容例 |
---|---|
生産数 | 1時間あたり・日あたり・品番別など |
サイクルタイム | 各工程の処理時間 |
稼働率 | 設備の運転時間/稼働可能時間 |
停止理由 | アラーム内容・頻度・発生時間帯 |
不良率 | 発生箇所・種別・原因分析メモ |
センサーやPLCから直接取得できるデータに加え、作業者の入力やヒアリングも貴重な情報源になります。
データ収集・可視化のステップ
✔ ステップ①:収集対象の明確化
「どのデータを、どこから、どうやって取るか」を決めます。
例:
- 設備Aの加工時間 → PLCのデジタル出力
- 不良発生回数 → 作業者のタブレット入力
✔ ステップ②:記録の標準化
ExcelやGoogleスプレッドシートを活用して、入力ルール・単位・時間帯を統一しましょう。
✔ ステップ③:グラフやダッシュボード化
データを“見える化”することで、現場の気づきを増やします。
- 折れ線グラフで日別の傾向を確認
- パレート図で不良原因の優先度を明確化
- ヒートマップで時間帯別のトラブルを可視化
実際の成功事例
✅ 樹脂成形工場(従業員20名)
課題:日によって不良品が増減するが原因不明
対応:
- 温度・圧力・時間データをPLCから取得し、クラウド保存
- 作業者が成形条件の変更履歴を入力
- グラフ化して傾向を分析
結果:
- 特定の温度条件で不良率が急増していたことが判明
- 自動制御化により、月の不良数が半減
- 現場で「条件変更禁止」の共通認識が形成された
データを「分析」するための基本視点
✔ 時系列で比較する
「昨日と今日」「前回と今回」を比べることで異常傾向が見えてきます。
✔ 他のデータと相関を見る
「サイクルタイムが遅い=不良率が高い」など、関係性を確認します。
✔ 例外値に注目する
平均値だけでなく、突き抜けた数値(外れ値)を重点的に分析しましょう。
✔ 分析したら、必ず“現場で確認”する
データだけで結論を出さず、作業者と一緒に現場を見に行くことが大切です。
データ活用の落とし穴と回避法
よくあるミス | 対応策 |
---|---|
データが溜まるだけで活用されない | 毎週1回「見る時間」を決めて運用に組み込む |
現場が記録を面倒に感じる | タッチ操作・QR読取など記録作業を自動化する |
分析が難しいと感じる | BIツール(MotionBoard, Power BIなど)を導入して視覚的に分析 |
データ分析を味方にする文化を育てる
- 「仮説→検証→改善」のサイクルを習慣化
- 成果が出たら全員で共有し、評価に反映
- “数値で会話する”文化を育てることが、強い現場をつくります
まとめ
自動化ラインをさらに進化させるカギは、「分析力」です。
感覚ではなくデータに基づいて判断できるようになることで、再現性のある改善・トラブルの予防・品質の安定を実現できます。まずは、“今日の生産数を記録する”ところからでも始めてみましょう。