製造業において「自動化=大量生産向け」というイメージを持っている方は少なくありません。
しかし近年では、小ロット・多品種・オーダーメイド製品にも対応可能な柔軟な自動化設備が増えています。
特にBtoBビジネスでは、「都度異なるサイズ」「特注仕様」「試作依頼」などに対応する生産体制が求められ、固定化された自動ラインでは対応が難しいという課題が浮き彫りになってきました。
本記事では、オーダーメイド対応における自動化の考え方と、現場で使われている工夫について、初心者向けにわかりやすく解説します。
オーダーメイド製品の特徴と難しさ
オーダーメイド対応とは、顧客ごとに異なる製品仕様や生産条件に柔軟に応じることを意味します。
特徴 | 内容 |
---|---|
製品形状が毎回異なる | 同じ設備設定では対応できない |
工程順が異なることも | 特定工程の追加・省略が発生 |
製品情報の管理が複雑 | 製番、図面、条件、注意点など多岐にわたる |
リードタイムの制約 | 試作〜納品まで短納期対応が求められる |
これらに対応するためには、“柔軟性のある自動化”が必要不可欠です。
柔軟な自動化を実現するためのポイント
■ 1. 「共通工程」に絞って自動化
すべてを自動化しようとすると、設備が複雑になり、かえって非効率になります。
そのため、まずはどの製品にも共通する工程(例えば穴あけ・洗浄・検査など)を対象に、自動化を検討しましょう。
■ 2. セル生産方式+ロボット導入
従来のライン生産ではなく、1つの作業エリアにロボット+作業台を配置する“セル生産方式”が有効です。
これにより、品種変更や作業の切替が簡単になり、特注対応にも柔軟に対応できます。
■ 3. 協働ロボット(コボット)の活用
人と同じ空間で作業できる協働ロボットを導入すれば、都度調整が必要な工程にも柔軟に対応できます。
特に、作業者の負担が大きい工程(ネジ締め、搬送、ラベル貼りなど)からの導入が効果的です。
■ 4. 治具交換の自動化・簡略化
オーダーメイド対応では、製品ごとに治具が異なるケースが多くあります。
→ 治具を自動交換できる仕組みや、フレキシブル治具(マグネット式、可変型)を採用することで、切り替えの手間を削減できます。
■ 5. 生産指示・図面のデジタル連携
工程ごとにタブレットやモニターを配置し、製番ごとの作業内容・図面・注意事項を自動表示することで、ミスの防止と作業効率向上につながります。
実例紹介:特注金属部品メーカーの取り組み
■ 背景
- 受注はほぼ100%オーダーメイド
- 製品点数は年間2000件以上
- 作業者の負担が大きく、設備の固定化が進まなかった
■ 導入内容
- 穴あけ・洗浄工程を共通設備で自動化
- 協働ロボットを2台導入し、部品の供給・仕分けを実施
- 治具はマグネットベース+QRコードで自動認識
- 作業指示はタブレットと連動、変更指示も即時反映
■ 効果
- 作業時間が約30%短縮
- 新人でも簡単に切替作業が可能に
- 作業ミスが月5件→ゼロに
- 顧客からの「納期の安定性」が評価され、リピート率が上昇
小規模でもできるオーダーメイド対応の工夫
工夫内容 | 説明 |
---|---|
ピッキング台車の標準化 | 製品サイズが違っても対応できるよう棚位置を可変式に |
可変対応ラベルプリンタ | ラベル内容を自動で変更+印刷 |
作業ナビゲーション表示 | 作業内容を動画で表示し、作業者依存を軽減 |
電動ドライバのトルク自動調整 | 製品ごとにトルク設定を自動で切り替え |
まとめ
「オーダーメイド製品には自動化は無理」と思われがちですが、工夫次第で柔軟な自動化は十分に可能です。
全自動化ではなく、“部分自動化×柔軟運用”によって、生産性と品質、そして納期対応力を高めることができます。
まずは、自社の製品で共通する工程を洗い出し、そこから着実に自動化の一歩を踏み出してみましょう。