「人手不足が深刻になってきた」「品質にばらつきが出て困っている」「生産性を上げたいけど何から始めたらいいか分からない」——中小製造業の現場でよく聞かれる課題です。
そんな悩みを解決する一手が「小規模ラインの自動化」です。大がかりな設備投資が必要なイメージを持たれがちですが、実は段階的かつ低リスクで始めることが可能です。
この記事では、初心者にも分かりやすく、小規模ラインの自動化を失敗なく進めるための考え方や手法をご紹介します。
小規模ラインとは?
小規模ラインとは、以下のような特徴を持つ生産ラインを指します。
- 作業員1~3人で構成
- 工程数が少ない(3〜5工程程度)
- 単一製品または少量多品種の生産
- 設備の入れ替えに慎重にならざるを得ない現場
こうした現場において、自動化は「置き換え」ではなく「補助する」イメージで始めるのが成功のカギです。
自動化の失敗あるある
自動化を急いだ結果、以下のような失敗が起こりがちです。
- 高額な設備を入れたが使いこなせず停止
- 作業者の反発や混乱で定着しない
- 回収コストに見合う効果が得られなかった
これらの原因は、多くが「現場の実情に合っていない計画」にあります。
失敗しないための5つのステップ
ステップ① 現場の“困りごと”を洗い出す
まずは作業者に「一番手間がかかっていること」「疲れる作業」「時間を食っている工程」をヒアリングしましょう。
例:
- 部品の供給が間に合わない
- ネジ締めが時間かかる
- 検査作業で目が疲れる
ステップ② 改善ポイントを1つに絞る
最初から全部を自動化しようとすると高コスト&高リスク。まずは1工程のみ、自動化してみましょう。
例:
- 搬送だけ自動化(コンベア導入)
- ネジ締めだけ自動化(電動ドライバ搭載ロボット)
ステップ③ 小型・安価な機器で試験導入
最近では中小工場向けに、低価格で設置も簡単なロボットや装置が多数登場しています。
- 協働ロボット(人と一緒に作業)
- 卓上型自動機
- 自走式部品カート(AGV)
“まず1台”が成功すれば、他ライン展開の説得材料にもなります。
ステップ④ “人との協働”を前提に考える
完全無人化を目指すのではなく、「人をサポートする」役割からスタートするのがベストです。
例:
- 作業者が材料をセット→ロボットが加工
- 作業者がボタンを押す→検査が自動で実施される
ステップ⑤ 効果測定と改善を繰り返す
自動化の目的は「作業者の負担軽減」と「品質・効率の向上」です。
- 1時間あたりの処理数
- 作業者の疲労感や工数変化
- 不良率の推移
これらの変化を数値で見て、定着させていきましょう。
実際の導入事例
✅ プラスチック加工業(従業員12名)
課題:成形後の取り出し作業に毎日3人がつきっきり
導入:単純な取り出しアーム1基(協働ロボット)を設置
効果:人員を2人から1人に減らし、作業者は別工程を担当。初期投資70万円で8か月で回収。
✅ 食品製造業(従業員6名)
課題:ラベル貼り作業でミスが多発
導入:卓上型ラベル自動貼り機を導入
効果:作業者1人→0.5人相当、ラベルミスゼロに。導入費用50万円で現場満足度も大幅向上。
初心者におすすめの機器メーカー・サービス
- 協働ロボット:Universal Robots、FANUC CRXシリーズ、DOBOT
- 卓上自動機:MISUMI、オリオン精工、オムロン
- AGV/AMR:ZMP、MUJIN、KEYENCE(搬送支援)
まとめ
工場自動化は、いきなり大きな設備投資をしなくても、小さく始めて段階的に進めることができます。特に小規模ラインでは、「人と協働するロボット」や「既存作業を支える自動化」が効果的です。
まずは一歩目として、自動化が“助けになる”工程から導入を検討してみましょう。