医薬品や医療機器のパッケージ工程では、他の製品以上に「清潔性」「異物混入防止」「人為ミスの排除」が強く求められます。特に手作業が入る工程では、どうしても“接触”によるリスクが残りがちです。
そこで注目されているのが、「非接触自動化」というアプローチ。
製品に人の手が触れずに、搬送・封入・検査・箱詰めまでを完結させる技術です。
この記事では、医療パッケージラインにおける非接触自動化の実践方法について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
なぜ“非接触”が重要なのか?
医療分野で非接触が重視される理由は次のとおりです。
- 異物混入の防止:髪の毛・繊維・皮脂など、人由来の異物をシャットアウト
- 感染症リスクの回避:人の接触が感染経路になることを防ぐ
- 製品の品質保証:封入・ラベリング・検査工程での人為ミスをゼロに
GMP(Good Manufacturing Practice)やISO13485といった医療品質基準に適合するためにも、非接触工程の導入は必須になりつつあります。
非接触を実現する自動化技術とは?
非接触自動化を実現するためには、以下の技術や機構が組み合わされます。
① クリーンロボットによる無人搬送
- HEPAフィルタ内蔵のAGV(無人搬送車)や多関節ロボットが製品を搬送
- 封入物・容器・説明書などもすべてロボットハンドで投入
→ 人の手を介さず、異物の発生源を物理的に排除できます。
② エアー搬送・真空吸着機構
- 製品を直接つかまず、エアーブローや吸着パッドで位置決め・搬送
- 圧力制御で破損や変形を防止しつつ、触れずに扱うことが可能
→「触れずに持つ」「触れずに押す」といった工夫が可能です。
③ 非接触検査センサー
- 画像処理で内容物やパッケージの状態を確認
- 重量センサーやX線検査で異物・欠品も検出可能
→ 製品に一切触れずに“OK/NG判定”を実現します。
ライン設計の考え方:人と機械のゾーン分け
完全な無人化が難しい工程でも、非接触を徹底するには「人の動線」と「自動化ゾーン」をしっかり分離することが大切です。
- クリーンブースと搬送エリアを物理的に仕切る
- ラインごとに“非接触ゾーン”と“作業支援ゾーン”を設ける
- 定期的な殺菌工程(UV・アルコールミストなど)を自動組み込み
こうした工夫によって、人が関わっても「製品に触れない」構成を保てます。
導入事例:滅菌パッケージ工場での取り組み
ある滅菌医療用具メーカーでは、以下のような非接触自動化を導入しています。
- 各種部品をロボットハンドで自動供給し、トレーに整列
- 製品と説明書を一緒に封入後、シール工程も自動で実施
- 最終工程では、画像検査+重量センサーでチェック
- 一連の工程を全自動クリーンブース内で完結
この結果、製品品質の安定はもちろん、
異物混入ゼロ・作業員の接触ゼロ・歩留まり向上を同時に実現しました。
導入のハードルと対策
もちろん、非接触化には以下のようなハードルもあります。
- 初期投資コストが高い
- クリーン対応機器の選定に専門知識が必要
- 動作確認・バリデーションの手間が増える
これに対しては、
- 段階的導入(1工程ずつ非接触化)
- 技術者との共同設計(ライン全体を俯瞰した構成)
- 導入前のPoC(試験導入)で効果検証
といった対応を組み合わせることで、着実に移行が可能です。
まとめ:非接触こそ、品質と信頼の第一歩
医療パッケージは、「人の命を預かる」もの。
だからこそ、非接触で清潔・確実に処理されるラインづくりは、企業にとって社会的責任でもあります。
非接触自動化は、単なる「機械化」ではなく、
- 作業者の心理的安心感
- 患者・医療従事者への信頼性提供
- 品質トラブルの根絶
につながる、現場改革の根幹となる技術です。
まずは一部工程から、非接触自動化への第一歩を踏み出してみませんか?