作業者の“慣れ”に頼らない自動化による再現性の確保

事例紹介

製造現場では、熟練作業者の「慣れ」や「勘」によって、品質が保たれていることが少なくありません。

例えば、組立作業における微妙な力加減や、加工時の音や振動の違いを察知して対応するなど、属人的なスキルが大きな役割を果たしてきました。

しかし、そのような技能に依存すると、作業者の交代や体調の変化によって品質がばらつくという問題が生じます。

再現性とは何か?なぜ重要なのか?

再現性とは、同じ条件で作業を行った場合に、常に同じ結果が得られる能力を指します。
製品の品質を一定に保つには、この再現性が不可欠です。

再現性の低い現場では、「昨日はうまくいったのに、今日はなぜか失敗した」という事態が起こりやすくなり、不良品の発生やクレームの原因になります。

自動化で再現性を高めるという発想

作業を自動化することで、人的要因によるばらつきを最小限に抑えることができます。

例えば、圧力や速度、タイミングといった工程条件をプログラム化すれば、常に同じ設定で作業を行うことが可能になります。

人の手では難しい「ミリ秒単位」「ミクロン単位」の精度を自動化機器は実現できます。

活用事例1:ねじ締めのトルク管理

手作業でのねじ締めでは、作業者によって締めすぎたり、緩すぎたりすることがあります。

これを防ぐために、自動トルクレンチを導入し、所定の力でねじを締めるように設定すれば、誰が操作しても同じ品質を保てます。

データ記録も可能になり、トレーサビリティの確保にもつながります。

活用事例2:液体の定量注入

調味料や接着剤などの液体を一定量注入する工程では、人の感覚に頼るとどうしてもバラつきが生じます。

ここに定量ポンプや自動注入装置を導入すれば、毎回決まった量を高精度で供給できます。

これにより製品の品質安定と原材料の無駄削減が同時に実現できます。

自動化の落とし穴とその対策

ただし、自動化すれば必ず再現性が確保されるとは限りません。

センサーの誤作動や装置の微妙なズレなどにより、機械もまた「ばらつき」を生むことがあります。

そのためには、定期的なキャリブレーション(校正)や予防保全が不可欠です。
また、データを常に記録・分析し、異常値を早期に検知する仕組みも重要です。

まとめ:人から仕組みへ、品質を“標準化”する

「慣れ」や「勘」に依存した品質管理から脱却し、誰が操作しても同じ結果が得られる仕組みを作ることが、これからのものづくりに求められます。

自動化はその強力な手段であり、再現性のある品質を確保することで、顧客満足や生産効率の向上につながります。人の技能は分析・改善へと活かし、実行は機械に任せる。

それが未来の現場の在り方です。

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