新型コロナ、地政学リスク、半導体不足、船便遅延……。
近年、私たちのサプライチェーンは想定を超えるトラブルに次々と直面しています。
製造現場では、「部品が届かない」「代替材料が見つからない」「納期が間に合わない」といった混乱が常態化しつつあります。
そんな中で注目されているのが、“変化に強い”自動化戦略です。
この記事では、サプライチェーンの不確実性が高まる今だからこそ見直したい、自動化のあり方について解説します。
なぜ今、“柔軟性ある自動化”が求められるのか
従来の自動化は「同じモノを、同じ工程で、大量に」作ることを前提に設計されてきました。
しかし今、調達できる部品や材料が日々変化する中では、
- 決まった材料が入らない
- 代替部品に切り替えが必要
- 生産計画が毎週変更される
といった事態が当たり前になっています。
こうした環境では、「止まらない自動化=柔軟性のある設計」が強さの条件になります。
“強い自動化”に必要な3つの条件
以下の3点が、混乱時代でも活きる自動化戦略のカギです。
① 柔軟性(Flexibility)
- 一つのラインで複数の製品や仕様に対応できる「マルチプロダクト対応」
- ロボットのツール自動交換、画像認識による部品種別判別などで、設定変更を最小化
- プログラム変更や品種切り替えが即時にできる構成が理想
② 可視化(Visibility)
- どの工程で“詰まり”が起きているか、リアルタイムで把握可能な構成
- MES(製造実行システム)やIoTセンサーを活用し、稼働・在庫・異常情報を常に見える状態に
- サプライチェーン側の納期変更などもシステムに反映し、現場調整と連動
③ 分散性(Decentralization)
- 一部工程が止まっても、別工程やラインで一時的に代替できる構成
- “全体停止”を防ぐために、工程間のバッファや代替設備を設けておく
- 海外生産拠点・国内協力工場とシームレスに切り替えられる体制づくりも重要
導入事例:切削部品メーカーの柔軟自動化
ある精密部品メーカーでは、海外からのボルト調達が遅延し、出荷計画が毎月変更される事態に直面していました。
そこで実施した対策は以下のとおりです。
- ロボットハンドをマグネット+ネジ締め両対応に変更し、部品の形状差異にも対応
- 自動倉庫と連動した生産スケジューラで「在庫に応じた生産指示」を即時反映
- 作業者のPC画面で「今使える部材・使えない部材」が一目でわかる仕組みを構築
結果的に、調達トラブルが発生しても、出荷遅延ゼロを3ヶ月連続で達成することに成功しました。
自動化計画に組み込むべき“柔軟性”チェックリスト
導入時・更新時には、以下のような視点で構成を見直すのがおすすめです。
- 1台の装置で複数品番を扱える設計か?
- ラインが一部停止しても、稼働を維持できる構成か?
- 工程の入れ替えや後工程先出しが可能なスケジューリングか?
- “例外処理”がマニュアルでなく自動で回避できる設計になっているか?
- 外部変化(納期・材料)を現場が即座に把握できるシステムがあるか?
まとめ:「止まらない工場」は、変化を許容できる工場
サプライチェーンの混乱は、今後も断続的に続くと予想されます。
そのとき、「この設備はこれしか作れない」では通用しません。
むしろ、「何が来ても、どうにかできる」柔軟性こそが、自動化に求められる新しい強さです。
まずは、小さな工程からでも、“止まらない工場”を目指す設計へとシフトしていきましょう。