ここ数年で、中国製の産業用ロボットは大きく進化を遂げています。かつては「安価だが精度や耐久性に課題がある」とされていた中国製ロボットも、今では国際的な技術基準に近づきつつあり、日本企業でも導入を検討するケースが増えてきました。
本記事では、中国製ロボットの性能を具体的に比較し、日本工場で導入可能かどうかを解説します。
主な中国ロボットメーカーと特徴
中国では複数の有力ロボットメーカーが存在します。
中でも代表的なのが以下の企業です。
- Efort(イーフォート):多関節ロボットに強みを持ち、自動車分野や金属加工業界で多く採用されています。
- Estun(エスチュン):中小規模の組立や溶接分野に適したモデルを展開。
- Siasun(シアソン):大学との共同研究による技術力が強みで、医療やサービスロボットにも展開。
- ABB中国製造:スイス資本のABBが中国で生産するモデルは、品質と価格のバランスが取れています。
これらのメーカーは、性能向上と国際展開を視野に入れた製品開発を続けており、コストメリットも大きな魅力です。
日本製ロボットとの比較ポイント
中国製と日本製ロボットを比較する際の主なポイントは以下の通りです。
比較項目 | 日本製ロボット | 中国製ロボット |
---|---|---|
精度・繰返し精度 | 非常に高い(±0.01mmなど) | 一部機種で±0.05mm程度まで向上 |
耐久性 | 長寿命、部品供給も安定 | 品質にばらつきあり、長時間稼働に注意 |
価格帯 | 高価格(数百万円以上) | 比較的安価(半額以下のことも) |
サポート体制 | 全国対応、迅速な対応可能 | 日本国内では一部代理店対応 |
カスタマイズ性 | 高度な応用に対応可能 | 標準仕様中心(最近は柔軟性向上) |
価格面では明らかに中国製に軍配が上がりますが、長期間にわたる運用や万が一のトラブル対応まで含めて評価する必要があります。
日本工場での導入可否を判断するポイント
中国製ロボットの導入が適しているかどうかを判断するには、以下の点を明確にすることが重要です。
- 求める精度はどの程度か?
部品組立や搬送など、多少の誤差が許容される工程であれば、中国製でも十分に対応可能です。 - サイクルタイムは厳しいか?
高速・高精度が求められるラインでは、日本製の安定性が安心材料となるケースが多いです。 - 導入後のメンテナンスはどうするか?
現地での保守体制やサポートが十分であるかを確認する必要があります。特に地方工場では代理店対応の可否が鍵になります。
導入事例とメリット・リスク
実際に中国製ロボットを採用した日本企業では、「初期コストを大幅に削減できた」「組立工程の省人化に成功した」といった声もあります。
一方で、「故障時の対応に時間がかかった」「マニュアルが不親切だった」といった課題も見られます。
こうした事例を踏まえると、まずは試験導入から始め、小規模なラインや補助工程に適用するのが現実的なアプローチと言えるでしょう。
まとめ:中国製ロボットは“使いどころ”で選ぶ
中国製ロボットは、コストパフォーマンスに優れ、導入のハードルが低い一方で、使い方や用途に応じた見極めが必要です。
特に「安かろう悪かろう」という認識は過去のものであり、正しく選定・運用すれば、十分に日本工場の戦力になり得ます。
信頼できる代理店や支援体制を確保し、実績を積み重ねながら活用の幅を広げていくことが、これからの工場自動化の鍵となります。