グローバルな製造体制が進む中、日本企業が海外パートナーと一緒に自動化設備を開発・導入する場面が増えています。しかし、言語や文化、技術の常識が異なる中で「言ったつもり」「伝わってなかった」というすれ違いが多発しがちです。この記事では、海外パートナーと自動化仕様をすり合わせる際のポイントを、初心者にも分かりやすく解説します。
前提をそろえるために必要な“言葉の定義”
例えば「自動搬送システム」と一口に言っても、日本と海外では意味する内容や想定している構成が異なることがあります。そこで大切なのが、使用する用語や図面の定義を事前にそろえることです。
- 「AGV」は自律走行か誘導式か?
- 「検査」は目視か画像処理か?
- 「自動化範囲」は何から何までを含むのか?
こうした定義を文書化し、仕様書の冒頭に明記するだけでも、大きな認識ズレを防ぐことができます。
仕様の“ゴール”を共有する
どのような自動化設備を導入するにしても、「最終的にどうしたいのか」というゴールイメージが共有されていないと、設計の方向性がバラバラになってしまいます。
- 省人化が目的なのか?
- 品質の安定が目的なのか?
- トレーサビリティ強化が目的なのか?
目的によって、必要な仕様もコストのかけ方も変わってきます。オンラインミーティングや仕様検討会の初回では、ゴールを図解・数値で共有することをおすすめします。
図面・フロー図・動画を“共通言語”に
言語の壁を越えるには、視覚情報の活用が非常に効果的です。
- 機械構成は3Dモデルで共有する
- 制御の流れはタイムチャートで示す
- 実際の作業をスマホ動画で撮影し共有する
こうした情報を交えながら「百聞は一見に如かず」の精神で進めることで、相手の理解度が大きく向上し、仕様検討のスピードが加速します。
「できること」「できないこと」を早めに線引きする
海外パートナーとのプロジェクトでは、相手の技術力や装置の制約によって、期待していた機能が難しい場合もあります。そのため、要望は最初から100%盛り込むのではなく、以下のように3段階で分類して伝えると効果的です。
- 必須要件(Must)
- 希望要件(Want)
- 将来対応でも可(Optional)
こうすることで、交渉がしやすくなり、現実的な仕様の落としどころが見つけやすくなります。
通訳任せにしない、技術英語の“最低限”
現地通訳がいる場合でも、専門用語やニュアンスが伝わらないことがあります。日本側の担当者も、以下のような最低限の技術英語は覚えておくと安心です。
- Tact time(タクトタイム)
- Interlock(インターロック)
- Sensor offset(センサーのずれ)
- Jig alignment(治具の位置合わせ)
現場に立ち会う技術者がこうした表現を直接使えると、コミュニケーションのスムーズさが格段に向上します。
まとめ:成功のカギは“伝える努力”と“共通の道具”
海外パートナーと自動化仕様をすり合わせるには、言葉以上に“情報の構造化”と“伝え方の工夫”が求められます。図面、動画、定義文書、優先順位付けなどのツールを使いこなしながら、誤解のない仕様を構築することが、プロジェクト成功の最短ルートです。「伝える力」こそが、グローバル現場での競争力になるのです。