現地人材との協働における“言語レスUI”の設計実例

事例紹介

海外の工場や現地人材と協働する際、よく課題となるのが「言語の壁」です。現地スタッフの母国語が英語でも中国語でも、日本語のUI(ユーザーインターフェース)では通じません。

だからといって全て多言語翻訳するのも大変。そこで注目されているのが、「言語レスUI(Language-Free UI)」です。

今回は、実際の工場で導入された言語レスUIの設計実例を通じて、その考え方と効果を紹介します。

言語レスUIとは?

言語レスUIとは、文字情報に頼らず、誰でも直感的に操作できるユーザーインターフェースのことです。

アイコン・色・形・動き・音などを活用することで、言葉を介さずに機械の操作や状態把握ができる仕組みを指します。国籍・年齢・学歴に関係なく使えるため、グローバル工場での標準化に向いています。

実例1:インドネシア工場での検査装置UI

ある電子部品メーカーでは、インドネシア工場で不良検査機のUI改善に取り組みました。それまで英語表記の画面だったものを、次のように変更しました。

  • ✅ 合格:緑の○マーク+ビープ音1回
  • ❌ 不合格:赤の×マーク+ビープ音2回
  • 🔄 再試行:オレンジの↻マーク+点滅表示

文字は一切使わず、動作と色・音だけで判断できるようにした結果、トレーニング時間は半減し、誤操作も激減しました。

実例2:中国拠点でのタッチパネル制御

自動搬送機のUIでは、操作項目を「ピクトグラム化」して以下のように設計しました。

  • ▶️:スタート(緑の矢印)
  • ⏹️:ストップ(赤い四角)
  • 🛠️:メンテナンス(スパナアイコン)
  • 📦:荷下ろし(箱アイコン)

現地スタッフにアイコンの意味を事前に教えるだけで、言語の異なる複数の国の作業員にも共通の操作が可能になりました。

デザインのコツ1:文化に配慮したアイコン選定

たとえば「✖=だめ」という記号も、文化によっては否定ではなく「選択肢の一つ」として捉えられることがあります。そのため、使う記号や色は「世界で共通の意味になるか?」を意識することが重要です。

  • 緑=進む、赤=止まる → 多くの国で共通
  • 上矢印=上昇?出荷? → 用途によって誤解されやすい

実際のUI設計では、現地スタッフへの確認やフィードバックも取り入れながら調整を行うことが重要です。

デザインのコツ2:テストと観察を繰り返す

言語レスUIは「つくって終わり」ではなく、「使って理解できるか」がポイントです。

現地作業者に操作させて、反応を観察し、分かりづらそうな部分があればすぐに修正できるようにしておきましょう。

  • 操作ミスの回数を記録
  • 操作時間の変化をチェック
  • 質問回数の変化を見る

これらの定量データを取りながら、UI改善を続けるのが成功の鍵です。

メリット:教育コスト削減と多拠点展開のしやすさ

言語レスUIを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 現地語への翻訳が不要
  • 操作教育が短縮できる
  • 拠点ごとのUIカスタマイズが不要
  • 海外との仕様統一が可能になる

特に多国籍スタッフが混在する製造現場では、言語を越えた共通インターフェースが“業務の共通言語”になります。

まとめ:言語レスUIは“多国籍協働”の潤滑剤

言語レスUIは、単なる画面デザインの工夫ではなく、「誰もが迷わず使える」仕組みそのものです。現場の混乱や教育負担を減らし、多拠点展開や技術伝承にも効果を発揮します。

これからの自動化は、“多言語対応”から“言語不要”へ。

直感的に伝わるデザインが、グローバル工場における新たなスタンダードになりつつあります。

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