製造現場では、機械の突然の故障が生産ライン全体に大きな影響を与えます。従来は点検や経験によって故障を防いでいましたが、近年ではAI(人工知能)を使って「過去の異常ログ」を自動で蓄積・学習し、将来の故障を予測する取り組みが進んでいます。
本記事では、AIによる異常ログの活用と、実際の工場での応用例について、初心者にもわかりやすく解説します。
異常ログとは?
異常ログとは、機械や設備で「通常とは異なる状態」が発生したときの情報のことです。例としては、
- センサー値がしきい値を超えた
- 通常よりも遅れて動作した
- 通信エラーが連続発生した
- オペレーターが緊急停止ボタンを押した
などがあります。これらのログは、設備の“違和感”をとらえる貴重なヒントになります。
AIによる異常ログの活用ステップ
- ログの収集・蓄積
PLCやSCADAからの異常信号、センサー異常値、アラート履歴などを自動で収集し、クラウドまたはデータベースに保存。 - 前処理(クレンジング)
ノイズや不要なデータを除去し、分析しやすい形に整える。 - AIモデルの学習
正常時と異常時のデータパターンをAIに学習させる。異常の傾向(時間帯・振動パターン・温度変動など)を把握。 - リアルタイム判定
新たなセンサーデータと過去の異常パターンを照らし合わせ、AIが“異常の兆候”を予測。 - アラート・制御連動
閾値を超える前に設備を減速・停止させたり、メンテナンス予定を前倒ししたりする。
実例①:空調用ファンモーターの故障予測
ある電子部品メーカーでは、空調ファンのモーターが年に数回故障し、生産に影響を与えていました。そこで、以下の仕組みを導入しました。
- モーターの振動、回転数、消費電流を常時モニタリング
- 故障直前の異常パターンをAIに学習させる
- 同様のパターンが再現されたらアラートを出す
結果として、導入後の1年間で突発停止はゼロ。予兆段階で部品交換が行われ、生産ロスを防げました。
実例②:搬送ラインのセンサーログ監視
食品工場では、パッケージ搬送ラインでセンサーの感知ミスによるトラブルが多発していました。
そこで、
- フォトセンサーの信号ログをすべて蓄積
- AIが「ミス検知が多い時間帯や温湿度条件」を学習
- 状況に応じて事前に予防保全アラートを出す
といった仕組みを構築。トラブルの発生率は50%以上減少しました。
導入のポイント
- ログは“捨てない”ことが重要:異常ログも正常ログもすべて価値ある学習データ
- 初期段階では“アラートのみ”でも可:制御連携は段階的に進める
- 現場の声とセットで分析する:AIが気づかない「人間の違和感」も活用すべき資源
AIは万能ではありませんが、「気づく力」「学ぶ力」で人を補完する存在です。
今後の展望:再学習と多拠点横断型AI
AIによる故障予測は、一度学習して終わりではなく、現場ごとに“継続的に学ぶ”ことが大切です。
- 同じ工場内の別設備からの知見を共有
- 海外拠点とのログ連携によるグローバル故障予測
- 品質管理や工程改善へのデータ活用にも展開
異常ログという“現場の声”をAIに聞かせることで、製造現場全体が進化していきます。
まとめ:AIは、現場の“異常”を学び、未来を守る
今までは、“壊れてから直す”が当たり前だった現場も、
これからは“壊れる前に気づく”が標準になります。
異常ログを地道に集め、それをAIに学ばせ、未来のトラブルを未然に防ぐ。
それが、次世代の安定稼働を支える「AI故障予測」の力です。

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