単品機からスタートする段階的自動化導入の勘所

事例紹介

自動化を検討する中小製造業の多くが、次のような悩みを抱えています。

  • 全体ラインの自動化は予算的に厳しい
  • どこから手をつければいいのか分からない
  • 導入失敗のリスクが怖い

そんな現場にとって最も現実的なスタートが、「単品機」から始める段階的自動化です。

単品機とは?

単品機とは、1つの工程や1つの動作に特化した小型の自動機械です。

例としては、

  • ボタンを押すと穴あけを行う専用機
  • 検査用の画像認識カメラ+排出装置
  • 梱包作業だけを自動で行う装置
  • スタッカーユニットなどの搬送補助機器

ライン全体ではなく、“手作業の一部”を自動化するイメージです。

単品機導入のメリット

導入コストが低く、リスクも少ない

1工程分なので、導入コストは50万円〜300万円程度が一般的。補助金も活用しやすく、失敗しても全体に与える影響は最小限。

効果が見えやすく、説得材料になる

自動化による“時間短縮”や“歩留まり改善”などが数値で把握しやすく、経営層の納得も得やすい

作業者の抵抗感が少ない

すべてを機械に任せるのではなく、「サポート装置」という位置づけなので、現場の受け入れがスムーズです。

後から“つなげてライン化”が可能

最初は単体で使用し、実績を重ねた後で“隣の工程”とつなぎ、最終的に自動ラインへと発展できます。

どの工程から始めるべきか?

以下のような工程が、単品機による自動化に適しています。

  • 繰り返し動作が多い工程(穴あけ、ねじ締め、梱包など)
  • 人によるばらつきが品質に直結する工程(目視検査、計量)
  • 作業者の負担が大きい工程(重量物搬送、熱処理後の取り出し)

「1日100回以上同じ動作をする工程」が狙い目です。

実例:町工場の自動検査ユニット導入

ある金属加工工場では、最終検査工程の目視チェックにばらつきがあり、クレームが発生していました。

そこで導入したのが、画像認識AIを搭載した単品検査機

  • 作業者が製品をセット
  • カメラが傷や寸法を自動チェック
  • 合格品だけを排出ボックスへ

結果として、検査ミスが大幅に減少。
作業者も「目が疲れない」「安心して任せられる」と好評で、2台目の導入も決定しました。

段階的自動化へのステップ

STEP1:単品機の導入

最も負担の大きい、またはばらつきやすい工程に1台だけ導入。

STEP2:効果を可視化して共有

作業時間・不良率・稼働率などの改善結果を数値で確認。社内に共有。

STEP3:隣の工程にも展開

次は組立や搬送など、関連する工程に自動化を拡大。

STEP4:工程間を連携してミニライン化

センサーやPLCを使い、単品機どうしを連携。生産性が飛躍的に向上。

導入時の注意点

既存作業の分析を怠らない

現場で実際に何秒かかっているか、どんなミスが多いかを数値で把握しないと、効果が見えづらくなります。

設備だけでなく、教育・標準化もセットで

せっかく導入しても、「誰も使えない」「設定が難しい」では意味がありません。

ライン化を見越した仕様選定

単品機でも、将来的に他機と連携できるインターフェースや設計思想があると、拡張性が高くなります。

まとめ:「まず1台から」が成功の鍵

自動化は“いきなり全部”ではなく、“できるところから少しずつ”が成功の鉄則です。

  • 単品機はコストを抑えてスモールスタートできる
  • 効果が出れば、周囲の理解と投資判断が得やすくなる
  • 段階的に広げていけば、将来的には全体ラインへと進化可能

まずは1台。
その一歩が、工場全体の生産性を変える大きなきっかけになるのです。

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