工場自動化において、機械が完成しても、すぐに稼働できるとは限りません。
それは、機械設計者と制御エンジニアの間に連携不足があると、後工程で“手戻り”が発生するからです。
実は、この2者の連携レベルが高いほど、自動化プロジェクトのスピードと品質は格段に向上します。
機械設計者と制御エンジニア、それぞれの役割
機械設計者
- フレーム、ユニット、治具の設計
- モーターやシリンダーの選定
- 実装性・耐久性を重視
制御エンジニア
- センサ、PLC、サーボの制御設計
- タクト時間や安全制御の調整
- オペレーション性・メンテ性を重視
本来は別々の専門性を持ちながらも、同じ「1台の設備」に対して責任を持つパートナー同士です。
連携不足が生むトラブル例
- モーター配置が狭すぎて制御盤が収まらない
- 機構は動くが、制御ロジックが複雑で動作が不安定
- センサ取り付け場所が後回しにされ、検出不良が発生
- 操作パネルの位置が作業動線と合わない
こうしたトラブルの多くは、「設計段階でのすり合わせ不足」が原因です。
自動化スピードを加速させる3つの連携ポイント
コンセプト設計段階で“並走”する
機械設計が終わってから制御設計に入るのではなく、構想段階から両者が一緒に考えることで、“後戻り”を大幅に削減できます。
- モーションの流れとタクト設計を共有
- 必要な制御入力・出力の見積もり
- 安全回路と装置構成の整合性確認
3Dモデルと電気仕様をセットで設計
最近では、3D CADとPLC制御ソフトを並行して設計する方法(メカトロ設計)が主流になりつつあります。
- モーター・シリンダーの動作タイミングを可視化
- I/O配置やセンサ位置を仮想空間で事前検証
- バーチャルコミッショニング(仮想立ち上げ)も可能
これにより、現場でのトライ&エラーが大きく減少します。
テスト工程を共同で実施
装置立ち上げ時、機械設計者が離れてしまうと、“制御だけで調整する”という事態になりがちです。
- モーション不良の原因が機械か制御かの切り分け
- 装置動作ログをもとに再設計提案
- 問題発生時の対応スピードが段違いに
こうした連携により、「すぐ動く装置」=「スピード感ある自動化」が実現されます。
実例:連携強化で導入スピード30%短縮
ある食品機械メーカーでは、従来バラバラに設計していた機械と制御を、以下のように連携強化しました。
- プロジェクトキックオフ時に共同レビューを実施
- 共通フォルダで仕様書・モデル・I/O表をリアルタイム共有
- 週1で進捗と問題点をすり合わせ
結果として、
- 設計〜立ち上げ期間が30%短縮
- 不具合件数が半減
- 操作性向上により現場の評価も高まる
連携の“質”が、自動化の“速度”と“信頼性”に直結した好例です。
現場でできる小さな改善から始めよう
- 機械・制御チームで週次ミーティングを設定
- 設計レビューに異なる職種を招く(例:保全・生産)
- 設計資料に“インターフェース共有欄”を設ける
- シミュレーションツールの共同活用
大きな仕組みを変えるより、まずは日々のコミュニケーションから改善することで、プロジェクト全体がスムーズに動き出します。
まとめ:「分業」ではなく「協業」が加速の鍵
自動化の成功は、「良い機械」だけではなく、「動いて初めて価値が出る設備」によって生まれます。
そのためには、機械設計者と制御エンジニアが“壁を越えて協力し合う”姿勢が不可欠です。
- コンセプト段階から一緒に設計する
- デジタルツールで情報を可視化・共有
- 実機テストも共同で乗り越える
この“チームワーク”こそが、自動化のスピードと完成度を飛躍的に高めてくれるのです。