製造現場の自動化は、単に生産効率を高めるだけではありません。もう一つの大きな価値は「データ」です。設備から得られる稼働データ、品質データ、工程データを活用することで、顧客に対して課題解決型の改善提案営業が可能になります。
この記事では、初心者向けに、自動化で得たデータを使った改善提案営業の進め方をわかりやすく解説します。
自動化データの種類を知る
まず、現場でどのようなデータが取れるかを理解しておきましょう。
- 稼働データ
稼働率、停止時間、稼働時間帯 - 生産データ
生産数、良品数、不良品数、歩留まり - 品質データ
寸法、重量、外観検査の合否 - エネルギーデータ
電力、空気圧、ガス、水などの使用量 - 保全データ
故障履歴、部品交換履歴
これらはIoTセンサーや生産管理システムから取得可能です。
データ活用の基本ステップ
✔ ステップ1:現状分析
取得したデータを集計し、以下の点を確認します。
- どこでムダ・ロスが発生しているか
- ボトルネックはどこか
- 品質ばらつきの傾向はあるか
例:1日の稼働率が70%しかないのは、設備停止時間が多いためと判明。
✔ ステップ2:改善ポイントの特定
データをもとに改善可能な部分を洗い出します。
例:
- 稼働率 → 段取り時間短縮、設備保全強化
- 歩留まり → 作業条件の最適化
- エネルギー → 夜間無駄運転の停止
✔ ステップ3:提案内容のまとめ
提案資料では以下を整理します。
- 現状の課題(データで裏付け)
- 改善の方向性
- 期待される効果(数値化できれば理想)
例:「段取り時間を10分短縮することで、1日あたりの生産数が5%向上」
営業提案の進め方
① 顧客の課題を聞く
最初に顧客の課題をヒアリングします。
例:「納期に間に合わない」「不良が多い」「コストを下げたい」
② データから裏付けを取る
課題に関連する自社のデータを分析し、「自社ではこういう改善をした」という実例を見つけます。
③ 顧客向けにカスタマイズ提案
顧客の現場に置き換えるとどう改善できるかを提案。顧客から得られる情報があれば、それをもとに簡単なシミュレーションを行うのも効果的です。
④ ビフォー・アフターを見せる
提案資料では、改善前後の変化をグラフや表で見せると説得力が増します。
例:
- 改善前:稼働率70% → 改善後:稼働率85%
- 改善前:不良率3% → 改善後:1%
データ活用を強化するツール
- BIツール(例:Tableau、Power BI)
見える化・分析を高速化。 - ダッシュボード(例:IoTプラットフォーム)
リアルタイムデータの監視。 - AI解析ツール
異常検知、需要予測。
これらを組み合わせると、提案の質がさらに向上します。
実例紹介
ある中小の樹脂加工メーカーは、自社の生産データから段取り時間の改善に着目。類似課題を持つ取引先に対して「当社では段取り時間を30%短縮し、生産効率を15%改善しました」と提案したところ、新規ラインの改善依頼を獲得。データに基づく提案は顧客の信頼を得やすいことが実証されました。
注意点
- データの見せすぎに注意:顧客に必要な情報に絞る。
- 専門用語を避ける:営業先にはわかりやすい言葉で説明。
- 改善効果を過大評価しない:実現可能な範囲を示す。
まとめ
自動化で得たデータは、現場改善だけでなく営業活動の強力な武器になります。課題を分析し、データで裏付けし、顧客目線で改善提案を行うことで、営業の質が格段に上がります。ぜひ社内の営業・技術・現場で連携し、データを活かした提案力を強化していきましょう。