製造業の現場でよく聞く悩みとして、「在庫と実際の生産数が合わない」「納期に対して進捗が不明確」「現場と本社の情報がズレている」といった声があります。これらの課題を根本から解決する手段が、自動化設備とERP(基幹業務システム)の連携によるリアルタイム生産管理です。
本記事では、初心者の方にもわかりやすく、ERPと自動化設備の連携で何ができるのか、導入のメリットや進め方について解説します。
なぜ生産管理は「リアルタイム化」すべきなのか?
従来の生産管理は、紙の帳票やExcel入力に依存しており、以下のような課題がありました。
- 実績入力にタイムラグがある
- 不良発生や設備停止が管理者に届くのが遅い
- 正確な在庫がわからず、誤発注が発生する
これらはすべて、「情報の遅れ」が原因です。だからこそ、リアルタイムで現場の情報を取得し、ERPと連動させることが重要になります。
ERPとは? なぜ連携がカギなのか?
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、製造・在庫・購買・販売・会計などの情報を一元管理するシステムです。
ERPと生産設備が連携することで、
- 現場の生産実績が即時に反映
- 進捗が自動更新され、納期の予測精度が向上
- 材料の発注タイミングが最適化される
といったメリットが生まれます。
自動化設備との連携でできること
✔ 実績の自動収集
PLCやセンサーを通じて、生産数・加工時間・不良数などを自動でERPに記録。
✔ 稼働状況の可視化
設備ごとの稼働率、停止理由をダッシュボードで一目で把握可能。
✔ リードタイムの短縮
作業開始から完了までの情報が即時伝達されるため、後工程への引き継ぎがスムーズに。
✔ 不良・異常の即時連携
設備異常や不良発生時にERPへ通知が入り、在庫・納期の再計算が自動化される。
導入事例:部品加工メーカー(従業員30名)
課題:紙ベースでの生産記録により、納期遅れや在庫差異が頻発していた。
導入内容:
- 加工設備にセンサーを設置し、生産数を自動記録
- ERPと連携し、進捗をリアルタイム反映
- 各作業ステーションにモニター設置し、指示内容をデジタル表示
効果:
- 記録ミスゼロに
- 生産遅れの早期発見が可能になり、納期遵守率が95%→100%に
- 在庫誤差が1/10以下に改善
導入のステップ(初心者向け)
ステップ①:現場の情報整理
「どの設備から、何の情報を取得したいか?」を明確にします。例:生産数、不良数、停止時間
ステップ②:ERP側での受け入れ項目の確認
システムが外部からの情報をどう受け取るか(API・CSV連携・MQTTなど)をチェック。
ステップ③:センサー・PLCの導入(または既存活用)
すでにデジタル信号が取れる設備があれば、それを活用。ない場合は簡易センサーの設置を検討。
ステップ④:データのつなぎ込み
IoTゲートウェイなどを通じて、ERPへデータ送信できるように設定。
ステップ⑤:ダッシュボード化・アラート設定
リアルタイム表示や異常通知の設定により、管理者の意思決定が加速。
よくある課題とその対応
課題 | 対応策 |
---|---|
ERPが古く、外部連携できない | IoTゲートウェイで一時蓄積し、CSV出力連携 |
設備にデジタル信号がない | センサーやタコメーターで追加計測 |
社内のITリテラシーが不安 | 初期は外部ベンダーに設計・設定を依頼し、内製化を徐々に進める |
まとめ
自動化設備とERPの連携は、「人の手による報告」から「機械が正確に報告」する生産管理への転換です。
これにより、進捗のズレや在庫誤差、納期の遅れといった“見えない問題”がすべて見えるようになり、即座に対処できる体制が整います。
まずは、1ライン・1工程からでも始めてみることが、未来の“強い現場”への第一歩です。