自動化機器の導入は、製造現場の効率や品質に直結する重要な決定です。しかし、「価格が安いから」「メーカーが勧めたから」といった理由で機器を選んでしまい、現場での運用に支障が出るケースも少なくありません。
この記事では、初心者でも理解できるように、現場目線に立った自動化機器の選定基準とその考え方を実例とともにわかりやすく解説します。
なぜ「現場目線」が重要なのか?
経営層や購買部門が主導で機器を選ぶと、カタログスペックや価格ばかりに目が行きがちです。しかし、実際に使うのは“現場の作業者”です。
現場目線を無視した選定の失敗例:
- ボタン配置が複雑で操作に時間がかかる
- メンテナンスがしづらく故障が放置されがち
- 対象製品に対してオーバースペック/逆に能力不足
これらはすべて、“選定時に使う人の声を反映していない”ことが原因です。
自動化機器の選定基準7つ
以下は、多くの現場で重視されている選定基準です。
✔ ① 作業の実態に合っているか
- 製品の大きさ、重量、形状に合っているか
- 対象ワークの品種やバラつきに対応できるか
- サイクルタイムに無理がないか
✔ ② 操作がシンプルか
- 誰でも迷わず使えるUI(タッチパネルや表示ランプ)か
- 教育時間が最小限で済む設計か
✔ ③ メンテナンスのしやすさ
- 清掃や部品交換がしやすい構造か
- 消耗品の入手性は良いか
- トラブル時のエラー表示が分かりやすいか
✔ ④ トラブル時の対応が早いか
- メーカーサポート体制は万全か(平日昼間のみ?24時間?)
- 部品交換にどれくらい時間がかかるか
✔ ⑤ 設置スペースに無理がないか
- 現場の動線を邪魔していないか
- 他の設備との干渉がないか
✔ ⑥ 拡張性・柔軟性があるか
- 将来的な工程変更・製品変更に対応できるか
- プログラム変更や外部機器連携の自由度
✔ ⑦ 価格と効果のバランス
- 安くても“使い勝手が悪い”なら意味がない
- 少し高くても、“毎日使う”なら生産性で回収できる
実際の選定プロセス事例
✅ ケース:協働ロボット選定(精密部品工場)
背景:手作業でのネジ締めが負担になっていたため、協働ロボットを導入検討。
比較ポイント:
比較項目 | A社ロボ | B社ロボ |
---|---|---|
重量 | 35kg | 20kg(設置しやすい) |
教示方法 | 専用ソフト(PC要) | 手で動かして覚えさせる方式 |
可搬重量 | 3kg | 5kg(今後の品種拡大に有利) |
メンテ性 | 専門技術者が必要 | 操作画面で自社でも可能 |
結論:現場スタッフが操作できるB社製を選定。
導入効果:
- 作業員の疲労軽減
- 生産数15%アップ
- トラブル時も自社でリカバリ可能
購入前に必ず「現場検証」すべきこと
導入前の現場検証で、次のポイントをチェックしておきましょう。
- 実ワークを使っての動作テスト(事前貸出/デモ機)
- 設置スペースに実際に置いてみるシミュレーション
- 作業者の操作訓練を短時間で行ってみる(直感的か?)
小規模工場でもできる選定の工夫
- 現場スタッフを選定会議に同席させる
- 選定理由を数値化して比較表を作る(メンテ時間・生産性など)
- 「費用対効果」を年単位でシミュレーションする
これにより、単なる「価格比較」ではなく、“使える機器”の選定が可能になります。
まとめ
自動化機器は、導入して終わりではなく、「使いこなしてこそ価値がある」ものです。そのためには、現場目線での選定が不可欠です。
カタログスペックや価格だけでは判断できない“使いやすさ”“対応力”を重視し、ぜひ納得のいく選定を実現してください。