工場の自動化を成功させるには、技術や設備だけでなく、「人」の体制づくりが欠かせません。特に、社内に自動化プロジェクトチームを立ち上げることは、自動化の定着と持続的な改善の鍵となります。
しかし、「どうやってチームを作ればいいの?」「誰を巻き込めばいい?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、初心者でもすぐに実践できるように、社内に自動化プロジェクトチームをつくる手順と運営のポイントをわかりやすく解説します。
なぜプロジェクトチームが必要なのか?
多くの自動化失敗事例の原因は、「丸投げ体制」にあります。
- 経営層が方向性だけ示して現場任せ
- 現場が忙しくて動けない
- 情報がバラバラで全体像が見えない
これを防ぐためには、組織横断で明確な目的を共有し、役割分担できる“チーム”が必要です。
自動化プロジェクトチームの理想メンバー構成
チームは以下のようなメンバーで構成されるのが理想です。
役割 | 主な担当 |
---|---|
プロジェクトリーダー(推進役) | 全体統括、目標設定、進捗管理 |
現場代表(オペレーター) | 作業実態の把握、運用提案 |
設備保全担当 | 機器選定、導入後の保守計画 |
生産管理/調達担当 | 工程全体との整合性、在庫調整 |
IT/情報システム担当 | センサー連携、データ活用 |
経営層サポート | 決裁・資金面での支援 |
※中小企業では一人が複数役割を兼ねてもOKです。
チーム立ち上げのステップ
ステップ①:経営層の理解と明確な目的設定
「なぜ自動化を進めるのか?」を明文化し、チームに共有できるようにします。
例:
- 残業削減(月平均20h → 10h)
- 不良率低下(2% → 1%未満)
- 人手不足対応(ライン3人体制 → 2人)
ステップ②:チームメンバーの選定と任命
- 各部門からバランスよく選出する
- 忙しい人ばかりに偏らないよう注意
- 経営者から「任命する」ことで責任感が生まれます
ステップ③:定例ミーティングの設定(週1回など)
- 現場の課題共有
- 導入設備の進捗確認
- 成果やトラブルの共有
定期的な報告と対話で、プロジェクトの“熱”を維持します。
ステップ④:試験導入(PoC)と改善の繰り返し
- 小さな工程でテスト運用(例:ネジ締めの自動化)
- 成果と課題をチームで分析し、改善サイクルを回す
成功事例:製造業A社(従業員60名)
背景:ロボット導入を業者に丸投げし、結局使われなかった。
見直し後の取り組み:
- 現場・保全・ITから構成されたプロジェクトチームを設置
- 工程観察→課題抽出→設備選定をチームで実施
- PoCで効果測定し、段階的に他ラインへ展開
結果:
- 月80時間の残業が20時間へ削減
- 自動化への現場の抵抗感もなくなり、提案が増加
- 経営層も数値で効果が見えるようになり追加投資が加速
継続的に回すためのポイント
✔ 成果は“数値化”して可視化
- グラフやダッシュボードで共有
- 効果が明確になると、社内の理解が得られやすくなります
✔ チーム活動を“日常業務”に組み込む
- 打ち合わせを定時後にせず、業務時間内に設定
- 兼務者の業務負荷を調整し、継続しやすくする
✔ チーム内で“成功体験”を共有する
- 小さな改善でも「うまくいったね」と共有する文化
- 現場が「やってよかった」と思える仕掛けが重要です
まとめ
自動化を一過性のプロジェクトで終わらせないためには、「仕組み」として回る体制づくり=プロジェクトチームの存在がカギとなります。
「現場をよくするのは現場の力」。その力を集めて方向性をそろえることで、自動化は大きな成果を生み出します。
まずは「社内の誰とチームを組めばいいか」から考え、第一歩を踏み出してみてください。