自動化で事故を防ぐ“二重インターロック”の設計思想

事例紹介

自動化ラインが普及するにつれて、機械による重大事故のリスクも同時に増加しています。特に「思わぬタイミングでの起動」や「一時的な安全装置の無効化」が原因で発生する事故は、現場に深刻な影響を与えることがあります。

そこで注目されているのが、“二重インターロック”という設計思想です。一重では防げない操作ミスやトラブルに備えることで、安全性を大幅に高める仕組みとして、多くの工場で採用が進んでいます。

そもそもインターロックとは?

インターロックとは、特定の条件が満たされない限り機械が動作しないようにする安全設計のことです。例えば、

  • 扉が開いていると機械が動かない
  • エリア内に人が入ると自動で停止する

といったように、「機械が人に危害を加えない」ための仕組みとして用いられます。

なぜ“一重”では危険なのか?

一つの条件だけに頼るインターロック設計には、以下のようなリスクがあります。

  • センサの誤検知や故障に気づかない
  • 作業者が手動で一時解除してしまう
  • 複数人で作業していると想定外の行動が起こる

こうした“盲点”をカバーするために、「同時に2つ以上の条件を満たさないと動かない」ようにするのが、二重インターロックの考え方です。

二重インターロックの基本構成

以下のような2つの安全要素を組み合わせて制御します:

  • 物理的安全装置: 扉スイッチ、セーフティロック、非常停止
  • 論理的安全条件: センサの検知、操作信号、タッチパネルでの承認

例えば、

「扉が閉まっている」かつ「センサが人の不在を確認」しないと起動しない

といったように、条件を“AND”でつなぐことにより、どちらか一方の故障や誤操作でも安全を維持できます。

よく使われる二重インターロックの例

扉スイッチ+エリアセンサ

扉が閉じているかつ、エリアセンサで人の不在を確認した場合のみ再起動。

タッチパネル操作+押しボタン承認

設定ミスや誤操作を防ぐために、画面と物理スイッチの両方で操作を要求。

光電センサ+マットスイッチ

足元の侵入と正面からの接近を同時にチェックし、安全エリア外でのみ起動。

導入時の注意点

二重インターロックを設計・導入する際には、以下のポイントに注意しましょう。

  • センサの配置と死角に注意: エリア全体をカバーすること
  • メンテナンスモードと通常運転を切り分ける: 特権操作による誤動作を防止
  • インターロック状態を“見える化”する: 操作盤に表示灯や状態表示を設ける

また、作業者への定期的な教育も不可欠です。

実際の導入事例

  • 金属加工ライン: プレス機に扉インターロック+足元スイッチを追加。保全時の事故ゼロに。
  • 搬送装置: 自動再起動時の誤検知を防ぐために、センサ2重化を実施。誤作動が激減。
  • 食品工場: 洗浄時の誤起動を防ぐため、手動操作と物理ロックの両方を設置。

まとめ:安全は「想定外」を想定することから

一重のインターロックでは防げなかった事故を、二重の仕組みによって未然に防ぐ。それが、現代の自動化現場における安全設計の基本です。

“誤動作は起こるもの”と捉え、物理+論理の組み合わせで安全を設計すること。それこそが、人と機械が共存する工場に求められる新しいスタンダードです。

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