他部署巻き込み型で進める「全社的自動化戦略」の立て方:初心者向け解説

事例紹介

製造現場の自動化はもはや一部門の取り組みではなく、全社的な成長戦略の柱として捉える必要があります。現場の省人化だけでなく、購買・品質・経理・営業など、すべての部門が関わる“企業改革”に近い活動です。

しかし現実には、「現場だけが頑張っている」「自動化=工場内だけの話」と誤解されてしまい、横の連携が進まず、思うような効果が出ないケースも多く見られます。

この記事では、初心者の方でも理解しやすいように、他部署も巻き込みながら全社的に自動化戦略を構築する方法を解説します。


なぜ「全社的な視点」が必要なのか?

部門単位の自動化には以下の限界があります。

  • 投資判断が経営層とつながっていない
  • 他部門の業務に影響が出るのに連携されていない
  • 成果の全体最適が図れず、部分的な改善で止まってしまう

たとえば、生産ラインを高速化しても、在庫管理や出荷体制が整っていなければ、ボトルネックが別の場所に移るだけです。

だからこそ、自動化は「工場部門だけの課題」ではなく、「企業全体の構造改革」として考える必要があります。


他部署を巻き込む3つの効果

✔ 経営層:投資の意思決定がスムーズに

目的・効果が会社全体で共有されていれば、導入判断が早くなります。

✔ 営業部門:短納期対応や品質改善を提案に活用

納期遵守率の向上やトレーサビリティ強化は、営業力の強化にもつながります。

✔ 品質・調達部門:自動化設備に合わせた設計や部品選定が可能に

設計段階から自動化を前提としたプロセスを作ることで、後戻りがなくなります。


全社戦略を構築するステップ

ステップ①:トップメッセージで方向性を示す

「当社は5年以内に主要工程の80%を自動化する」など、経営層から明確なビジョンを発信することが最初の一歩です。


ステップ②:部署横断のプロジェクトチームを結成

  • 製造、保全、設計、品質、営業、IT、経営企画などから選出
  • 定例ミーティングを設けて情報共有と役割分担

ステップ③:全体マップ(ロードマップ)を作成

  • 3年、5年スパンで「どこをいつ自動化するか」を工程別に明示
  • 「先に効果の出やすい工程」から着手し、段階的に展開

ステップ④:部門ごとの貢献領域を整理

部門主な貢献内容
製造対象工程の選定・運用検討
保全機器の選定・メンテ性評価
品質自動検査条件・合否判定の標準化
営業顧客要望をフィードバック
経理投資対効果の計算・予算確保
ITデータ連携・セキュリティ設計

ステップ⑤:成功体験を全社で共有する

  • 最初の成果(例:ライン自動化で人件費10%削減)を社内報や朝礼で発信
  • 成果の“見える化”が、次の協力者を生みます

成功事例:精密部品メーカー(従業員120名)

背景:製造部門が単独で自動化を進めるも、調達・出荷体制が追いつかず、納期遅延が発生。

取り組み

  • 経営層主導で「全社自動化推進プロジェクト」を発足
  • 設計部門と連携して「自動化しやすい製品設計」へ
  • 営業部門も提案資料に自動化実績を活用

成果

  • 1年で主要工程の70%が自動化
  • クレーム率が半減
  • 営業成約率が前年度比15%アップ

他部署を動かす“コツ”

  • 「あなたの部門にとってのメリット」を伝える
     例:「品質部門にとっても再検査の手間が減る」
  • 現場に足を運び、課題を共有する
     他部門への理解と共感が巻き込みのカギになります
  • 小さな改善でも評価し、表彰する
     “協力したくなる雰囲気”が組織を変えます

まとめ

全社的な自動化戦略は、「組織の壁を超えて一体となること」が成否を分けます。
他部署を巻き込むことで、自動化は単なる生産改善ではなく、企業の競争力そのものを引き上げる原動力になります。

まずは、社内の誰と手を組むべきか?を考えることから始めましょう。

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