工場自動化における“見えないロス”を洗い出す方法

事例紹介

自動化設備を導入したのに、思ったほど生産性が上がらない。
品質も安定してきたのに、なぜか残業が減らない。
そんな悩みを抱える工場は少なくありません。

実は、自動化によって「目に見えるロス」は減っても、“見えないロス”が残り続けていることが多いのです。

この記事では、自動化の効果を最大化するために必要な「見えないロスを洗い出す方法」について、初心者の方にもわかりやすく解説します。

“見えないロス”とは何か?

「ロス(損失)」には目に見えるものと、見えにくいものがあります。

見えるロスの例:

  • 装置の故障によるライン停止
  • 明確な不良による廃棄
  • 部品不足による生産ストップ

一方、“見えないロス”とは、以下のような「数値として把握されにくい」損失です。

見えないロスの例:

  • 段取り時間や微小なライン停止
  • 少しずつズレる品質調整作業
  • 作業者の迷い・探す動作
  • 検査工程の二度手間

これらは帳票に記録されない、“数字にならないムダ”として日々発生しており、全体の効率に大きな影響を与えています。

見えないロスを洗い出す基本ステップ

① 工程ごとの“実時間”と“理想時間”を比較する

例えば、組立1台に必要な理想時間が3分なのに、実際には平均4分かかっているとしたら、その差1分が「ロス」です。

この差を埋めるためには、

  • 作業者の動きにムダがないか?
  • 部品供給のタイミングは最適か?
  • 工具の取り扱いに手間取っていないか?

などを分解して検討します。

② “ムダ・ムリ・ムラ”の視点で現場を見る

日本の現場改善の基本である「3M分析」は、見えないロスの洗い出しに有効です。

  • ムダ:やらなくてもよい作業(例:探す・取りに行く)
  • ムリ:力や注意が必要すぎる作業(例:姿勢が不安定、視認性が悪い)
  • ムラ:日や人によって時間がバラつく作業(例:慣れてないと迷う)

これらをビデオ撮影+タイムスタディで可視化することで、誰でもロスを発見できます。

③ 収集できていないデータをあえて手書きで記録

自動化設備では、主要な動作ログは残るものの、「ちょっと止まった」「1回だけ部品詰まりが起きた」といった細かな事象はログに残らないこともあります。

そこで、オペレーターや保全担当に“気づいたロス”を記録してもらうことが重要です。

「設備の反応が遅い」「材料がよく詰まる」など、“感覚的な情報”も後で大きなヒントになります。

自動化でも見落としがちな“典型ロス”5選

① センサー誤検知による止まり癖

  • 温度や振動の影響で、わずかに誤検知 → 頻繁な小停止

② 定期点検の前倒しや過剰整備

  • 安心のために早めに交換 → 本来の寿命を使い切れていない

③ 段取り・品種切替のバラつき

  • オペレーターによって段取り時間に大きな差

④ AI検査導入による“過検出”

  • 本来問題ない微細な変化まで不良として扱ってしまう

⑤ 設備と人のインターフェース設計不良

  • 表示が分かりづらい、ボタン配置が悪いなど → 意図しない操作

これらは自動化したからこそ見落としやすく、人と設備の“すきま”に潜むロスと言えます。

改善活動に使える可視化ツール

見えないロスを定量化するためには、次のようなツールの活用も効果的です。

  • ラインバランスチャート: 工程ごとの時間配分の偏りを可視化
  • OEE分析: 計画停止・微停止・品質ロスを数値化
  • ヒートマップ: 操作画面や作業動線の頻度を色で表示
  • モーションセンサー付きカメラ: 人の動線・滞在時間の分析

現場に合ったツールを選び、“勘”ではなく“数字”でロスに向き合いましょう。

まとめ:「もう改善できない」は幻想

自動化が進むと、「これ以上改善の余地はない」と感じるかもしれません。
しかし、現実には“見えないロス”が多く残っており、それを洗い出す目と仕組みさえあれば、改善の余地は常に存在します。

まずは、「わずかな時間差」や「微妙な手間」に注目してみてください。
そこに、大きな改善の種が眠っているかもしれません。

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