エネルギーマネジメントと自動化の統合的アプローチ

事例紹介

近年、工場における生産性向上と同時に、「エネルギーの最適化」が経営課題として大きな注目を集めています。

電力価格の高騰、環境規制、カーボンニュートラルへの対応といった背景から、製造業においてはエネルギー使用量の見える化と制御の最適化がますます重要になっています。

本記事では、初心者の方にも分かりやすく、「エネルギーマネジメントと自動化をどう統合するか」について、具体的なアプローチとその効果を解説します。


エネルギーマネジメントとは?

● 工場で使うエネルギーを「見える化」し、「ムダなく使う」こと

エネルギーマネジメント(Energy Management)とは、工場内で使用される電力・ガス・空調・蒸気などのエネルギーをモニタリング・分析・制御することです。

目的は、コストの削減環境負荷の軽減持続可能な生産体制の確立です。


なぜ自動化と統合する必要があるのか?

生産設備やラインが自動化されても、エネルギー消費が高止まりしていては真の最適化とは言えません。そこで注目されるのが、自動化システムにエネルギーマネジメントの視点を組み込む統合的なアプローチです。

統合のポイントは以下の3つ:

  1. 生産とエネルギーの連動管理
  2. リアルタイム制御による省エネ化
  3. 蓄積データの分析による継続的改善

統合による具体的なアプローチ

① 機器ごとのエネルギー使用量を見える化

設備ごとにスマートメーターや電力量計を設置し、稼働時間・出力・消費電力を記録します。自動化システムと連携させることで、稼働状況に応じたリアルタイム監視が可能になります。

例: 成形機、空調設備、コンプレッサーなどの主要機器


② 稼働状況と連動した自動制御

自動化ラインの制御システムにエネルギー管理機能を統合し、「使うときだけ稼働する仕組み」を実現します。

  • 非稼働時の設備を自動で待機モードへ
  • 部分負荷運転への自動切り替え
  • 空調や照明を作業エリアと連動して最適化

③ エネルギーコストに応じた生産調整

時間帯別電力料金に応じて、エネルギーコストが安い時間にエネルギー負荷の高い工程を集中させるといった、生産計画との連携も可能です。

AIやスケジューラーと組み合わせれば、コストと生産効率を両立する自動運転ラインが構築できます。


事例紹介:自動車部品メーカー

ある中堅自動車部品メーカーでは、以下のような統合システムを構築しました。

  • 設備ごとにスマートメーターを設置
  • PLCと連携し、稼働中以外は自動で電源をOFF
  • 生産量と電力消費量をAIで学習し、最適なライン稼働パターンを提案

その結果、電力使用量を15%削減、CO₂排出も年間30t削減、加えて稼働率も2%改善という成果を上げました。


導入のメリット

項目内容
省エネ効果不要な電力消費をカットし、年間数十万円〜数百万円のコスト削減に貢献
設備寿命の延長不必要な稼働を減らすことで、設備の摩耗や劣化も抑制
トラブルの予防消費電力の異常値から、設備の劣化や不具合を早期発見
環境負荷の低減CO₂排出削減に貢献し、企業の社会的責任(CSR)にも寄与
生産性の向上生産とエネルギーを同時に最適化することで効率アップ

導入時のポイント

● 段階的に進める

いきなり全設備に展開するのではなく、電力使用量が多い設備から小規模にスタートし、効果検証と改善を繰り返しながら全体展開していくのが現実的です。


● 現場とシステム部門の連携

エネルギーの見える化と制御には、現場の理解と協力が欠かせません。設備管理部門・生産技術部門・IT部門が連携する体制を構築することが成功のカギです。


● 将来の拡張性も考慮する

クラウド対応やAI活用を見据えて、標準化された通信規格(Modbus、OPC UA など)を採用することで、後々の拡張がしやすくなります。


今後の展望

  • AIによるエネルギー需要予測と自動制御
  • 再生可能エネルギーとの連携最適化
  • カーボンフットプリントのリアルタイム可視化
  • ゼロエネルギー工場(ZEF)構想の加速

エネルギーマネジメントと自動化の融合は、「工場を止めない」「利益を最大化する」だけでなく、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となります。


まとめ

エネルギーの見える化と自動化の連携は、今や工場の競争力を左右する大きな要素です。

統合的に取り組むことで、単なる“省エネ”ではなく、“生産性・品質・環境対応”すべてを向上させることが可能になります。

まずは、身近な設備のエネルギー消費を知ることから始めてみましょう。そこから見えてくる「ムダ」と「可能性」が、次の改善と変革につながっていきます。

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