海外実習生教育に対応した多言語対応の自動化画面設計

事例紹介

日本の製造現場では、海外からの技能実習生や特定技能人材の受け入れが増え、もはや多国籍な労働力は当たり前の時代になっています。

一方で、工場の自動化が進む中、操作パネルやモニターの表示は依然として「日本語オンリー」「専門用語だらけ」という現場も少なくありません。

その結果、「意味が分からずに間違ってボタンを押した」「警告が読めなかった」といった言語の壁によるヒューマンエラーが発生するリスクも高まっています。

本記事では、海外実習生にも分かりやすく、安全かつ効率的に操作できる多言語対応の自動化画面設計のポイントを初心者向けに解説します。

なぜ多言語対応が求められるのか?

多言語対応の必要性は以下の点から明らかです。

  • ① 実習生の母語理解力を活かせる
    日本語が苦手な実習生でも、母国語表示であれば理解が早く、安全性も向上。
  • ② 指導者の教育負担が減る
    毎回翻訳や説明をしなくても、画面上で理解できれば、業務効率が改善。
  • ③ トラブル時の対応が正確に
    エラー表示や警告メッセージも母語で表示されれば、即時かつ正確に対応できる。

現場では“操作の失敗”よりも、“操作の意味が分からないこと”が最大のリスクになります。

基本方針:誰にでも「見て分かる」画面づくり

多言語化は単なる翻訳ではなく、「誰でも同じように操作できるデザイン」に落とし込む必要があります。以下の3つが基本指針です。

  1. ① 直感的なUI(ユーザーインターフェース)
  2. ② アイコンと色分けの活用
  3. ③ 多言語切り替え機能の搭載

ポイント①:言語切り替えは“ワンタッチで”

  • ホーム画面に「言語選択ボタン」を常設(日本語・ベトナム語・英語など)
  • 言語変更後もページ遷移時に設定を維持
  • 初期状態は実習生の国籍に応じた言語を自動選択

これにより、ユーザーが常に「自分の言語」で操作を継続できます。

ポイント②:誤解を防ぐビジュアル表示

  • 「開始」「停止」「異常」など、動作に応じた色(緑・赤・黄)で視認性を強化
  • エラー表示はアイコン+短文で表現(例:「⚠ 水圧が低下しています」)
  • ボタンは大きく、指の太さを考慮したタッチ設計に

特に読解力が不十分な人にも、視覚的な情報で意味が伝わる工夫が重要です。

ポイント③:音声・動画も補助的に

  • 操作説明に短い音声ガイド(ネイティブ音声)を組み合わせる
  • 作業手順を動画で再生可能にすることで理解促進
  • よくある質問や誤操作への説明をチャットボット形式で案内

“読む”だけに頼らず、“聞く・見る”を加えることで、多言語教育の負担を大幅に軽減できます。

導入事例:ベトナム実習生向け自動化画面

ある部品組立工場では、タッチパネル式の自動装置にベトナム語対応を導入しました。

  • 操作ボタンに「ベトナム語/日本語」併記
  • エラー時に母語での警告メッセージ+対応方法表示
  • 教育時に音声説明付きのデモ動画を再生可能に

結果として、新人の教育期間が2週間から1週間に短縮。
誤操作率は30%減少し、作業効率と安全性がともに向上しました。

導入の注意点

  • 翻訳の品質チェック:自動翻訳だけに頼らず、ネイティブチェックを推奨
  • 文字量を最小限に:複雑な表現よりも短く簡潔に(例:「作業を開始してください」→「開始」)
  • 更新の容易さ:設備更新時に対応言語も簡単に差し替えられる設計に

まとめ:言語の壁を超える“画面設計力”

多言語対応は、単なる表示変更ではなく、“理解力を補助する設計”そのものです。

自動化が進む今こそ、「機械がやさしく人に教える仕組み」が求められています。
操作パネルを多言語化することで、海外実習生の不安を減らし、自信を持って働ける環境が生まれます。

まずは1台の設備から。誰もが安心して触れる「言語にやさしい工場づくり」に取り組んでみましょう。

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