24時間稼働の工場では、日勤・準夜勤・深夜勤といった「3交代制」が一般的です。
しかし、シフトが変わるたびに発生する“申し送りミス”や、“伝達されないマニュアルの更新”が、生産トラブルの原因になることがあります。
特に、自動化されたラインでは「工程条件の変更」「メンテナンス情報」「注意すべき異常傾向」などの共有が極めて重要です。
そこで注目されているのが、“シフト別に自動で最適なマニュアルを表示する仕組み”です。
「シフト別マニュアル自動表示システム」とは？
このシステムは、勤務者のシフト・役割・設備の状態に応じて、その時間帯に必要なマニュアルや注意事項を自動表示する仕組みです。
- 出勤時にPCやタブレットでログインすると、自動的に該当マニュアルを表示
- その日の設備稼働状態やメンテ履歴に基づき、注意点がピックアップされる
- 教育レベルに応じて表示内容を切り替える（例：新人向け／熟練者向け）
つまり、「必要な情報だけが、自動で目の前に届く」状態を作ることが目的です。
よくある課題とシステムの効果
紙マニュアルが更新されていない
【課題】
現場には古い印刷物が残っており、最新の変更点が反映されていない。
【システム効果】
クラウド上のマニュアルを一元管理。更新後すぐに全シフトへ反映される。
申し送りの伝達が曖昧
【課題】
前のシフトからの注意事項や異常履歴が、口頭や紙メモでしか伝わらず、漏れが生じる。
【システム効果】
シフトごとの「引継ぎテンプレート」に沿って記録。次のシフトでは自動表示される。
人によってマニュアルの解釈が違う
【課題】
ベテランと新人で理解度が異なり、同じ操作でも違う手順になることがある。
【システム効果】
作業者の習熟度に応じたマニュアルを表示。動画付きや図解付きの切り替えも可能。
実装例：自動車部品メーカーの現場改善
ある自動車部品工場では、夜勤でのライン立ち上げ時に「工程設定ミス」が頻発していました。
原因は、日勤帯で変更された設定値が夜勤帯に正しく伝わっていなかったことでした。
そこで以下のようなシステムを導入：
- 出勤時に作業者がタブレットにログイン
- 所属ラインと役割に応じて、マニュアル＋当日の設定変更が自動表示
- 管理者が事前に「注意情報」を追加入力できる仕組みも導入
導入後、設定ミスが月15件→1件に激減。教育時間も短縮され、「安心して交代できる」と現場からも好評でした。
導入のポイント
誰でも使えるシンプルなUI
ログイン操作や表示切り替えは、タッチ1つで完了できるように。
マニュアルの形式を柔軟に
PDFだけでなく、画像・動画・音声ガイド・Q&A形式なども活用する。
表示履歴・確認履歴のログ化
「誰が、いつ、どのマニュアルを見たか」を記録して教育に活用。
紙＋デジタルの併用からスタート
いきなり完全移行せず、紙と併用しながら少しずつ慣れさせるのが成功のカギ。
今後の展望：AIによる“状況別表示”も視野に
将来的には、AIによって「過去の異常傾向」や「その時点の設備状態」に基づいたマニュアル提示も可能になります。
- 今回の作業内容に応じて、操作の注意点を優先表示
- 同じ時間帯に多いトラブル履歴を参照し、未然にアラート表示
- センサー情報と連動し、“次に起きやすい異常”を予測表示
こうした“先読み型マニュアル表示”が、さらなる安全と効率を支えていくことになります。
まとめ：マニュアルは“読むもの”から“届くもの”へ
3交代制の工場では、1日が3つに分かれる分だけ「情報伝達の質」が問われます。
従来の「置いてあるマニュアル」ではなく、「その場に、その人に合った情報が届く」──
そんな自動表示システムこそが、ミスのない交代、スムーズな立ち上げ、そして強い現場力を支える基盤になるのです。
