近年、小規模な工場や中小企業においても自動化のニーズが高まっています。しかし、限られたスペース・人員・予算の中で大規模な設備投資を行うのは現実的ではありません。そこで注目を集めているのが、「カート式」自動化という柔軟で省スペースな自動化アプローチです。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく、小型工場に適したカート式自動化の仕組みや導入メリット、最新の活用事例をご紹介します。
カート式自動化とは?
カート式とは、自走式または移動可能なユニット型設備を活用して生産や搬送を行うスタイルです。以下のような特徴があります:
- コンパクトな車輪付き装置(作業台、検査ユニット、ロボットなど)
- 自律走行または人の手で押して移動可能
- 必要な時に必要な場所へ移動して稼働
- 設備の「常設」を前提としない柔軟運用
AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)を活用したものも、カート式の一種と捉えられます。
なぜ小型工場に向いているのか?
✔ スペースが狭くても導入できる
レイアウトの変更や新たなライン増設が難しい工場でも、カート式なら空きスペースを活かして運用可能です。
✔ 少量多品種に柔軟に対応
工程ごとにユニットを切り替えられるため、製品切り替えが多い現場に最適です。
✔ 初期費用が抑えられる
フルラインの自動化と比べて、カート単体での導入が可能。段階的な拡張も容易です。
✔ 人との協働に適している
作業者の近くで動作し、作業の一部だけを代替。完全無人化より導入ハードルが低くなります。
カート式の主な種類と用途
▶ 作業支援カート
- 部品組立用ロボットアームを搭載した作業台
- パワーアシスト機能付きで高重量作業を支援
- 車輪付きで作業者が現場間を移動
▶ 自動搬送カート(AGV・AMR)
- 部品や製品を各工程へ自動で搬送
- 障害物回避やルート学習機能付き
- Wi-Fiやビーコンによるルート制御
▶ 品質検査カート
- 検査カメラ・センサーを搭載
- 任意の工程に持ち込み可能
- モニター付きでその場で結果確認
実際の活用事例
✅ 精密機器メーカー(従業員30名)
導入内容:
- ロボットアーム搭載のカートを2台導入
- 組立工程に応じて作業台を移動
効果:
- 作業者1人あたりの生産数が1.4倍に
- スペースの制約なく生産ラインを拡張
- 導入費用は固定設備の約30%で済んだ
✅ 食品加工工場(従業員15名)
導入内容:
- AMRによる原材料搬送をカート式で自動化
- 夜間は無人で庫内を巡回し、準備作業を代替
効果:
- 人手不足解消、深夜帯の残業削減
- 作業者の移動距離を大幅に削減
- トラブル時はスマホ通知による遠隔対応
導入の進め方とポイント
✔ 現場の動線と作業内容を把握する
どこで、何を、どう運ぶのかを整理しましょう。
✔ 小さな単位から試験導入
1台だけ導入し、特定の作業に充てることで効果を検証できます。
✔ 人との協調性を考慮
作業者の導線や安全対策もあわせて計画しましょう。
✔ 拡張性を意識する
複数台の連携や他機器との連携(Wi-Fi、RFIDなど)を見据えて設計します。
まとめ
「カート式」自動化は、小型工場や中小企業にとって、コスト・柔軟性・省スペース性の面で非常に相性が良い選択肢です。今すぐフル自動化が難しい場合でも、作業支援や搬送の一部から始めて、少しずつ効果を高めていくことが可能です。
まずは「今一番手が足りない作業」から導入を検討してみてはいかがでしょうか。