廃油リサイクルと自動回収装置の工場導入事例

事例紹介

製造業では、機械の潤滑油や切削油など、日常的に多くの油類が使用されています。しかしこれらは、使用後に廃油として処理が必要となり、環境への負担や処理コストが問題になりがちです。

近年、環境負荷の低減とコスト削減を同時に実現する方法として「廃油リサイクル」が注目されています。さらに、これを支えるのが自動回収装置です。この記事では、初心者の方にも分かりやすく、廃油リサイクルの基本、そして自動回収装置の工場導入事例について解説します。


廃油リサイクルの基本

◆ 廃油とは?

工場で使われる油は、時間の経過とともに以下のような変質を起こします。

  • 汚れ(切削粉・ゴミなど)が混入
  • 酸化や劣化による性能低下
  • 乳化や粘度の変化

これらは廃油として処理が必要になりますが、捨てるだけではなく、「再生利用」する道もあります。


◆ 廃油リサイクルのメリット

  • コスト削減:新油の使用量が減る
  • 廃棄物削減:環境負荷の低減
  • SDGs貢献:持続可能な循環型生産への寄与
  • 安定供給:自社内で再生すれば、供給リスクを軽減

自動回収装置の役割

従来は、作業員がドラム缶などで廃油を手作業で回収・運搬していましたが、

  • 作業負担が大きい
  • 漏れ・飛散リスクがある
  • 回収タイミングが遅れて、機械トラブルを起こす

といった課題がありました。

自動回収装置はこれらを解決するもので、主な特徴は、

  • 機械ごとに自動吸引ノズルやポンプを設置
  • タンクに自動移送+満杯検知
  • IoT連携で残量データの見える化+警報

これにより、安全・確実・効率的な廃油管理が可能になります。


工場導入事例

● 事例①:金属加工工場(切削油の自動回収ライン)

課題

  • 50台以上のNC旋盤から出る廃油を作業員が手作業で回収
  • 廃油タンクのあふれや汚れ飛散が問題
  • 廃油処理コストも年々増加

導入内容

  • 各NC旋盤にポンプ式廃油吸引装置を設置
  • 配管をタンクまで引き、全自動で吸い上げ→集中管理
  • IoTセンサーで廃油タンク残量を遠隔監視

効果

  • 作業員の負担を月50時間削減
  • 廃油再生装置と連動し、新油使用量を30%削減
  • 廃油処理コストも年間200万円削減

● 事例②:プラスチック成形工場(油圧作動油の管理)

課題

  • 金型交換時などに油圧ユニットから微量の廃油が漏洩
  • 都度ウエスで回収、廃棄処理コストが高い

導入内容

  • 機械下に自動排油トレイとセンサーを設置
  • 微量の油も検知次第、即時自動回収
  • 廃油処理業者と提携し、回収油は再生ルートへ

効果

  • 現場の清掃工数を40%削減
  • 油圧機器のトラブル減少(メンテ間隔が2倍に延長)
  • 環境監査で「環境配慮型現場」として高評価

● 事例③:食品工場(食用油の自動回収とリサイクル)

課題

  • フライ工程で使う大量の油を手動で廃棄回収
  • 労力が大きく、廃油の二次利用も未整備

導入内容

  • 自動排油システムをラインに組み込み
  • 廃油は専用タンクで冷却・保存し、バイオ燃料製造会社へ供給

効果

  • 作業員の負担軽減
  • 廃油の収益化(年間100万円の新規収入
  • 廃棄物処理量の削減

導入ポイント

ポイント内容
① 対象工程の特定廃油が多い工程・設備を洗い出す
② 設備との相性確認ポンプ設置場所、油種(粘度など)に適合する機器を選定
③ メンテナンス設計回収装置自体の清掃性・保守性も重要
④ 廃油の再生ルート確保自社再生か、外部業者への供給か方針を決定

今後の展望

廃油リサイクルは単なる「廃棄物処理」ではなく、資源循環の一環として企業価値を高める要素となっています。さらに今後は、

  • CO₂排出削減義務への対応
  • SDGs目標達成の一環
  • 循環型経済(サーキュラーエコノミー)への移行

が求められ、廃油リサイクル+自動化の需要はますます高まるでしょう。


まとめ

廃油の問題は、環境面だけでなく、コストや作業効率にも直結する課題です。自動回収装置を導入することで、安全・効率・環境の三拍子が揃った現場作りが可能になります。

これからの工場経営では、単に生産するだけでなく、“資源を無駄なく活かす現場”が、持続可能性のカギです。廃油対策を自動化の力で一歩進めてみませんか?

タイトルとURLをコピーしました